更新日:2023年05月17日 13:35
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業界5位の「マツモトキヨシ」は今年首位に返り咲く…その理由は?

 ドラッグストアと聞いて、真っ先に浮かぶお店はなんでしょうか。  都心部に住む方なら、「マツモトキヨシ」を挙げる人は少なくないでしょう。では、ドラッグストア業界売上1位がマツモトキヨシ(以下、マツキヨ)かといえば、そうではありません。  マツキヨは、1994年度から2015年度まで20年以上にわたって業界の売り上げ首位を走り続けてきましたが、その座を近年ある企業に譲っていました。それが、2017年から首位を奪ったツルハHDです。さらに2位にはウェルシアHDが続いています。  そう、マツキヨは現在、業界5位にまで転落。しかし、2020年に同社は再び首位に返り咲く可能性が高いです。いったい、この4年間になにがあったのでしょうか。  そこにあったのは、恋愛で例えるならばバチェラー友永真也さんもびっくりの、強烈なモテ男、ココカラファインの奪い合いでした。ほんまにすごい、近年のドラッグストア業界再編の動きを5分ほどで解説しましょう。

マツキヨ、業界5位に低迷。しかし…

 業界の王者から5位に沈んだマツモトキヨシ。この間、同社は何をしていたのでしょうか。答えを急げば、新規出店を抑制し、利益重視に徹していました。  2015年と2019年の営業利益率を、ドラッグストア業界上位の会社間で比較してみます。営業利益率は、下記の式で導き出せます。 【営業利益率】 営業利益÷売上高×100=売上高営業利益率(%)  なんとマツモトキヨシ、2019年の営業利益率については、大手ではトップの6.3%と好調。同社は虎視眈々と自社の体力をつけて、差別化を重視する戦略を取っていたのです。では、マツキヨの「差別化」ってなんでしょうか?

プライベートブランド開発に注力

 マツモトキヨシが2015年から力を入れた分野は、プライベートブランドでした。  包装デザインや機能を重視した医薬品や日用品の「matsukiyo」、化粧品「アルジェラン」など、ラインナップを拡充さえていきました。今や、同社のプライベートブランドの売上高構成比率は11%にまで成長しています。対する、ウエルシアHDのプライベートブランドは5.6%、ツルハHDは6.4%です。  マツキヨのプライベートブランド「matsukiyo」は徹底的にデータやSNS情報を活用した商品開発を行っています。プライベートブランドは、広告宣伝費を抑えられるという理由で、利益率が高いことで知られています。とはいえ、当然モノがよくなければ売れません。驚いたのは、その品質です。  matsukiyoが開発した保湿クリーム「ヒルメナイド油性クリーム」は、皮膚科で処方してもらえる「ヒルロイド」と同成分が含まれているのです。ヒルロイドは、美容目的で一度に50本以上処方されるケースもあり、現在、厚労省が保険適用外の検討をしているほど人気の代物。このヒルロイドと同じ成分のものを、マツモトキヨシはプライベートブランドとして開発しているのです。  こうした爆発的ヒット商品を次々生み出せるマツキヨ。その背景にあるのは、アジアからの訪日客も含めた延べ6千万人超の顧客データを徹底的に分析しているからです。同社のプライベートブランドは、膨大な顧客データとマーケティングの結晶なのです(化粧だけに)。
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ココカラファインは、なぜモテる?
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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