行政も把握していない震災ホームレス事情とは?
震災により職と家を失った者、復興特需に沸く被災地で仕事を得ようと移住したが、雇い止めにあった者など。今、被災地では「震災ホームレス」なる新たな問題が浮上している。容赦なく襲いかかる東北の過酷な冬を、彼らは乗り越えられるのか。被災地で路頭に迷った者たちの現状をリポートする!
夜の帳が下りた杜の都に、冷たいビル風が容赦なく吹きつける。震災から約8か月、ネオンが灯り始めた東北最大の歓楽街、仙台国分町にも、浮かれたような雰囲気はない。まだ11月だというのに仙台市内ではこの日、最低気温3.9°Cを記録した。
厚生労働省が行った調査によると、’11年1月時点の仙台市のホームレス人口は130人。震災後、市内のホームレスはどのくらい増えたのだろうか。仙台市健康福祉局健康福祉部社会課の担当者に尋ねると「大きな増加は見られていない」という。
しかし、「役所の数字なんて炊き出しに来ている人の数を数えただけだよ。俺の実感からすれば数百人はいるね。震災後に2、3倍くらいは増えているんじゃないかな」と話すのは仙台市在住の元ホームレスで、現在はボランティアで夜回り活動をする鈴木太さんだ。
「震災後に新たにホームレスになった人は、まだ蓄えがあるからネットカフェや深夜営業の飲食店で夜明かしすることもできる。その蓄えが尽きたとき、彼らは寒さの厳しい東北の凍てつく路上に放り出されることになる。震災ホームレスたちの冬は、まだ始まったばかりだよ」
冷え込みも厳しくなってきた夜11時頃、鈴木さんの情報をもとに、仙台駅西口から徒歩圏内にあるネットカフェを訪れてみた。
電車がまだ走っている時間だというのに、オープンスペースにあるリクライニングシートはすでに大半が埋まっており、いびきを立てて眠る人の姿もあった。
「震災の影響かはわかりませんが、去年の今頃よりお客さんは多いですね。人気は最も安いオープン席の6時間パックで850円。これでシャワーも無料で使えます。毎晩来られている人もいますが、寒い日には特に混雑することが多いですね」(ネットカフェ店員)
そして、終電までも間もない仙台駅西口に向かう。急ぎ足で改札へと急ぐ人混みのなか、駅の片隅に座り込んでいた50代のAさんに話しかけてみた。彼はホームレス歴1年ほどだという。
「被災地外からやってきて復興関連の期間労働に就いたはいいが、雇い止めされて、こっちでホームレスになったって言うヤツは結構いるよ。この前までこの辺にいたヤツは、被災して入った避難所生活が耐えられなくて、寮のある建設会社の期間工をやっていたらしい。でも、結局2か月くらいで雇い止めになって寮も追い出されたって。市内の避難所は8月で閉鎖されたし、仮設住宅の募集も締め切られている。『こんなことならおとなしく避難所にいればよかった』なんて言ってた」(Aさん)
被災地域の景気回復に一役買うと期待されている復興事業が、新たなホームレスを生み出している。なんとも皮肉な現象が被災地で起こっているようだ。
― 激増する[震災ホームレス]は越冬できるのか?【1】 ―
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