まだまだ油断できない新型コロナウイルス。その影響は“感染”せずとも一般家庭の人々にしっかりと及び始めている。妻との軋轢や育児に疲れ果てる者、帰宅難民と化す者、子供を奪われそうになる者……。今、多くの人の“コロナ疲れ”が臨界点に達しようとしている。テレビでは報じられない、名もなき被害者たちに迫る!
一般家庭を襲う“コロナ疲れ”の正体
新型コロナウイルスの感染拡大や自粛要請によるコロナ不況が騒がれるなか、水面下で問題になっているのが「コロナ疲れ」とも呼ばれる精神面への大きな負担だ。
東京大学で計算社会科学を研究する鳥海不二夫准教授によれば、3月下旬の小池百合子都知事の「感染爆発の重大局面」という発表以降、ツイッター上では「疲」や「ストレス」などの単語を含む投稿が急増。これは、長引く外出自粛要請などで、人々の疲労感が増していることが背景にあるという。
今回、取材班が全国40~50代の男性会社員400人に実施したアンケートでも、Q1の「今回のコロナショックではどういった面への負荷が大きいか」について7割以上が「精神面」と回答。多くの中年会社員がコロナ禍で神経をすり減らしていることが鮮明になった。
Q1.今回のコロナショックではどういった面への負荷が大きいですか?
・精神面 70.5%
・金銭面 23.3%
・肉体面 6.2%
「これらの“コロナ疲れ”は、まさに“コロナ適応障害”とも呼べるものです。感染の恐怖や環境の変化に対し、理解や感情を整理しきれず、仕事や生活に支障が出てしまっている状態と言えます」
そう語るのはこれまで数多くの会社員のメンタルケアに携わってきた心療内科医・海原純子氏だ。
「これまでは悩みの種となる“環境”を変えることで改善を目指すのが適応障害の主な治療法でした。しかし、今回のコロナは環境としては変えようがない。不慣れな在宅勤務や、家族全員が在宅することによるストレスが話題になっていますが、これらの環境も外出自粛要請下では変え難い。そのため、多くの人が解決法を見いだせず、精神的に追い詰められているわけです。こういった状況が続けば、日常生活に支障をきたす“鬱”に至る可能性もあります」
家族や自分自身が感染することへの恐怖も「コロナ疲れ」の要因のひとつだ。実際、Q2の「今、最も不安やストレスに感じていることは何か」の結果を見てもわかるように、半数以上が家族や自分の「コロナ罹患への不安」が一番のストレスだと答えている。
Q2.今、最も不安やストレスに感じていることは何ですか?
・新型コロナ罹患への不安 50.3%
・不景気による失職や減給 18.3%
・不慣れな在宅勤務 11.0%
・巣ごもり生活による家計圧迫 7.8%
・子供の受験や就職に障害 5.3%
・妻子と過ごす時間の増加 2.8%
・親しい友人らとの交遊の減少 2.3%
・その他 2.2%
SNS上で人気を博す精神科医・Tomy氏は「こうした周囲への疑心暗鬼の状態も精神の不調や家族間の関係悪化に影響する」として、こう提言する。
「そもそもネガティブな考え自体は悪いものではありません。むしろ、不安に対して適切に対応策を練ることがコロナ禍を生き抜くためのカギ。今、コロナの治療に当たっている医療関係者も“いつか自分も感染する”と思っている人が多いはずですが、彼らは“自分が感染した場合はこうなるからこうしておこう”と道筋を立てているためパニックにならない。一般人でも、最初からある程度、最悪のケースを想定しておけば、心の中で覚悟が定まって無用のストレスも小さくなるはずです」
Q3の「緊急事態宣言が延長する場合、あと何か月まで精神的に耐えられるか(4月20日時点)」への回答は「すでに限界状態」と「あと1か月」の合計が半数を超え、多くの人のストレスが臨界点を迎えているのがうかがえる。
「このケースでも、有効なのは腹を括ること。“この状態はもうしばらく続くだろう”と、長期戦を覚悟することでストレスを軽減でき、自分がこの状況下で何をすべきかが見えるようになる。そのすべきことに集中すれば“コロナ疲れ”は感じにくくなります」(Tomy氏)
Q3.緊急事態宣言が延長する場合、あと何か月まで精神的に耐えられますか?(4月20日時点)
・1か月の延長 40.3%
・3か月の延長 23.5%
・半年の延長 20.3%
・すでに限界状態 13.0%
・その他 2.9%