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スマホしか持たない学生とパソコンを使う学生「無視できない学力差」/佐藤優

 “外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
SNS

※写真はイメージです

SNSを活用して発信力のある人間になりたい

★相談者★ 刃(ペンネーム) 大学生 男性 21歳  バイト先の先輩から自己プロデュース力をつければ、どんなことがあっても生きていけると言われ、最近ツイッターやインスタを頻繁に更新していましたら、その先輩から「5万円でフォロワー数を増やすコンサルティングをしている人がいる」と勧誘されました。  私にはそんな大金がないので、お断りしましたが、SNSでの発信力がある人はみなさん成功しているように見えます。しかし、佐藤優さんはSNSを活用していないように見えます。なぜ、佐藤優さんのように発信力のある方がSNSを活用しないのでしょうか? そして、SNSを活用しなくても発信力のある人間になるにはどうしたらいいでしょうか? ◆佐藤優の回答  確かに私はSNSを一切使いません。それで、仕事にも生活にも支障がないので、使わないのです。一時期、LINE、フェイスブック、ツイッターに登録していましたが、あるとき、LINEのアカウントが乗っ取られ、私を騙ってコンビニで金券を購入するようにとの連絡が知人に送られたのをきっかけに、すべてのアカウントを消去しました。事情に詳しい人に調べさせたら、私を騙っていた人は、大阪府枚方市から発信していて、LINEだけでなくフェイスブックでも私になりすましていたようです。こういう嫌な経験があると、ツール自体を使いたくなくなります。  大学で教えていると、専らPCを用いている学生とスマホしか持たない学生の間で、無視できない学力差があることを痛感します。スマホしか持たない学生はSNSで時間を浪費しています。社会に出ると、学生時代のように長時間、体系的に勉強する機会はなかなか得られません。SNSでのやりとりに時間のほとんどを持っていかれていると、将来、そのツケを自分で払わなくてはならなくなります。  また、作家としての情報収集で、良質の情報をSNSから得ることはほとんどありません。もちろんトランプ大統領をはじめ重要な情報をSNSで発信している人もいますが、そういう情報は瞬時に新聞や通信社がキャリーするので、見逃す心配はありません。  さらにSNSは構造的にデマゴギーの温床になりやすいと私は見ています。それは、SNSが大衆社会と相性がいいからです。大衆社会がもたらす「超デモクラシー」の危険について、スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットは、こう指摘しています。
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SNSは独裁の土壌をつくりかねない
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’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

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