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日本で新型コロナ対策はもう不要?「日本は集団免疫を獲得」説の中身

 新型コロナウイルスについては「8月の感染者、月間で最多の3万2000人」などの報道が続き、不安を募らせている人が多い。そんな中で、奥村康・順天堂大学医学部特任教授(免疫学講座)は「日本はすでに、免疫保有者が国民の一定割合に達して収束に向かう『集団免疫』状態に達しており、リスクの高い高齢者施設や病院以外では感染拡大防止対策は不要だ」と断言している。どういうことなのだろうか。

コロナ収束は集団免疫しかない?

 奥村特任教授によれば、インフルエンザウイルスが原因だったスペイン風邪や香港風邪、コロナウイルスが原因だったSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)など、過去のすべてのウイルス感染症は「集団免疫」によって収束している。新型コロナウイルスも例外ではないという。  集団免疫とは、特定の集団や地域で、特定のウイルスに対する「免疫力(人が生まれつき持っている自然免疫と、特定のウイルスに感染してできる獲得免疫を合わせたもの)」を持つ人が一定の割合に達し、その人たちが壁になって感染が拡大しなくなった状態を指す(免疫力については後に説明する)。  この状態になっても、高齢化したり基礎疾患を持っていたり、あるいは体調が不調だったりして免疫力が弱い人は、ウイルスに感染して重篤な肺炎などになり、ごく少数の人は死亡する。ただ、死者の数は感染拡大期に比べてきわめて少なくなる。 「一定の割合」とはどの程度なのか、新型コロナの場合、当初は住民の70%程度と考えられていたが、最近はもっと低いと考える研究者が増えている。スウェーデンの公衆衛生庁は「40~45%」としており、宮坂昌之・大阪大学招聘教授は「20%程度」もあり得ると述べている(注1)。  集団免疫状態になったことを確認するには、何%くらいの住民が新型コロナウイルスに対する免疫を持っているか調べる大規模な調査が必要だが、これは簡単にはできない。

1日当たりの死者急減で判断

 代わりに奥村特任教授が判断の基準にしているのは、1日当たりの死者数の動きだ。感染拡大期に急増した死者数が急減に転じ、その後きわめて少ない状態が続いていれば、集団免疫状態と判断できるという。  厚生労働省のまとめによると、新型コロナによる死者は4~5月に急増し、4月22日には91人に達したが、6月になると減少し、6月中旬~7月中旬には1日に1~2人となり、報告なしの日もあった。
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新型コロナでなくてもコロナ死に?
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