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日本で新型コロナ対策はもう不要?「日本は集団免疫を獲得」説の中身

自然免疫をフルに働かせる習慣

 そして最近の研究で、NK細胞やキラーT細胞は学習することがわかってきた。普通の風邪の原因になるコロナウイルスに過去に感染していると、これらの細胞は新型コロナウイルスに対しても力を発揮する。これは「交差免疫」と呼ばれる。  ただ、抗体には、①ウイルスを不活化し、細胞への感染を防ぐ「善玉抗体」、②ウイルスの感染を促進する「悪玉抗体」、③不活化も感染促進もしない「役なし抗体」があるから注意が必要だ。抗体が増えても、②の悪玉抗体が増えた場合は症状が悪化し、「抗体依存性感染増強現象(ADE)」になることもある。  免疫力の強さは人により異なり、同じ人でも体調によって異なる。新型コロナウイルスに対しても自然免疫だけで排除できる人もいるし、獲得免疫が出動しても排除できず、重篤な肺炎などになる人も、少数だがいる。  自然免疫は体調がよいとフルに働くと、宮坂招聘教授はいう。①早起きして朝日を浴び、体内時計を狂わせない、②ラジオ体操やウォーキングで血流を上げる、③ストレスをできる限りなくす、などが有効だ。

スウェーデンは集団免疫達成を発表

 目を世界に転ずると、感染者(PCR検査の陽性者)が2500万人を超えたと大騒ぎになっている中で、アメリカ、ブラジル、イタリア、ルクセンブルク、スウェーデンなど多くの国々で、1日当たりの死者数がある時期を境に急減していることがわかる(死者数や急減の時期は国によって異なる)。これらの国々では集団免疫状態になっている可能性が大きい。  このうち政府が集団免役達成を発表したのが、スウェーデンだ。  同国の公衆衛生庁は7月17日の記者会見で、首都ストックホルム市では住民の抗体獲得率が17.5~20%に達し、これにキラーT細胞などを介した免疫を合わせると40%近くが免疫を獲得したと判断でき、集団免疫をほぼ達成したと推定できると発表した(注2、注3)。  同国の新型コロナによる死者(1日当たり)の動きを見ると、4月には40人を超える日もあったが、5月、6月と減少し、7月以降は数人以下の日がほとんどで、報告なしの日もある(注4)。同国が集団免疫を達成していることは、このような死者数の動きからも判断できる。  新型コロナに対しスウェーデンは、「長期間持続可能な方法で感染のピークを抑え、医療崩壊を来たさないようにする」ことを主目的とし、他の欧米諸国のような「ロックダウン(都市封鎖)」は実施しなかった。  具体的には、「高齢者施設の訪問と50人以上の集会の禁止」および「飲食店で客同士の距離をとる制限」だけを法律で定め、「可能な限りのリモートワーク」「不要不急の旅行の自粛」「社会的距離の確保」などは「勧告」され、実施するかどうかは国民の自主的な選択に委ねる方法をとった。  そうした対策を実施している間に免疫保有者が増え、集団免役状態に達したと考えられる。  集団免疫達成の発表から1カ月余り、人々の暮らしはどう変わったか。ストックホルム市在住の宮川絢子医師(カロリンスカ大学病院泌尿器外科)にメールで尋ねた。
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スウェーデンではマスクの着用は推奨されていない
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