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サイゼリヤのバイトを星付き一流シェフが続ける理由

―[働き方革命]―
 新型コロナウイルスが全世界を覆い尽くしてから半年以上がたち、飲食業界は依然として大混乱をきたしている。倒産も増えつつある今、私たちはどう働くべきか? 星付きレストランのオーナーシェフでありながら、サイゼリヤでアルバイトをする村山太一氏に話を聞いた。

“稼ぐ”ではなく“遊ぶ” 副業のポイントは「越境」と「多角化」

村山太一

村山太一氏

 厚生労働省は9月1日、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定版を公表。コロナ禍でますます副業解禁が進むことが予測されるが、「格安チェーンの『サイゼリヤ』でアルバイトする一流料理人」として話題を呼んでいるのが村山太一氏。9年連続ミシュラン一つ星を獲得している高級イタリアン「ラッセ」のオーナーシェフが、なぜサイゼリヤで? 「“美食=ガストロノミー”の世界は特にそうですが、狭い界隈で横滑りで人が回っています。しかし、飲食業という枠で見れば、サイゼリヤは自分たちの何百倍もの人に食の満足を届けている。そうした業界トップのノウハウを知らずに、自分のスキルを閉じ込めてしまうことに違和感を覚えたんです」  本業では高級イタリアンを切り盛りしながら、休憩時間や休日にアルバイトに勤しむ日々。 「体力的にはしんどいですよ。でも、働くというより遊びに行く感覚です。厨房ではなく、あえてホールを選び、そのなかでも下っ端として駆け回る。そうすることで、現場のリアルとノウハウを実体験として感じ取れました」

ポイントは「業界トップ」で働くこと

 ホールの導線や食洗器の回し方などサイゼリヤのノウハウをアレンジして、自分の店に応用。その結果、村山氏の店の経営や労働環境は劇的に改善した。 「労働時間が減ってスタッフが自由な時間を持てるようになり、サービスやホスピタリティについてじっくり考えられるようになりました。その結果、スタッフの生産性が向上してひとり当たりの売り上げが2倍以上となり、利益率が上がったことで、コロナ禍でも黒字経営が続けられています」 「高級店でバイトしていたら、何も変わらなかった」と村山氏。業態や業界を本業からずらして“越境”すれば新たなノウハウや視野が得られると語るが、ポイントは「業界トップ」で働くこと。 「業界内の評判や技術や規模など、何か突き抜けている職場で働くことが大切。しかも、企業文化や価値観に共感できる職場がいい。お金を稼ぐことが目的になると俯瞰で見られなくなるので、『好きな職場に遊びに行く』くらいが、学ぶにはちょうどいいんです」
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コロナ氷河期

終わりなき凍りついた世界を生き抜くために
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