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中国系航空会社、輸送量で世界トップに。「安かろう悪かろう」の印象は今

新型コロナの影響で変わる航空業界の勢力図

A380

世界一のエアラインとなった中国南方航空のA380型機 (提供:©AIRBUS)

 2020年、コロナ禍で最も大きな影響を受けた業種と言われる航空業界。新型コロナの影響で旅客数が減り、倒産した航空会社も少なくはない。こうした背景があり、世界での旅客輸送量の勢力図をコロナは大きく塗り替えた。近年は「アメリカ>欧州>中国」の順でシェアを占めており、ここに中東のエミレーツ航空が順位を上げて割って入る形になっていた。しかし、この構図が「アメリカ>中国>欧州」へと変わろうとしているのだ。  エアラインの輸送量の指針である有償旅客キロ(RPK)で単独で世界一となったのは中国南方航空だ。輸送数の上位5社を見てみると、中国南方航空を筆頭に、2位アメリカン航空(アメリカ)、3位デルタ航空(アメリカ)、4位ユナイテッド航空(アメリカ)、5位中国国際航空(中国)となっており、欧州の航空会社はエールフランス-KLMが7位で最大となっている。
輸送量

2019年と2020年の輸送量を比較してみると、中国系エアラインの台頭がよくわかる

 中国の航空会社が……というだけでなく、アジア圏のエアラインが輸送量で世界一の座に就いたのは史上初である。中国と欧州が入れ替わっただけでは……と思われる方も多いだろうが、航空業界にとっては大事件だ。しかも、この航空業界の大事件、意外にも私たち日本人にとって大きな影響を与えることになるのかもしれないのだ。それも大きなメリットとして……。

中国系エアラインが台頭してきたわけとは?

 メリットを説明する前に、欧州のエアラインがランキングから落ち、中国の航空会社が台頭してきた背景について説明しておこう。それはコロナ禍で人と物の往来が閉ざされ、国をまたぐ移動が制限されたからに他ならない。欧州は多くの国で構成されており、欧州内の移動が減れば必然的にエアラインの便数も減る。  それに対し、中国のエアラインは国際線が減っても国内線の需要があったことが大きなポイントとなる。中国は感染を早期に抑え込んだことで、2020年6月以降に国内線の輸送量が回復。春節に次いで人の移動が増える秋の国慶節があった10月は中国南方航空、中国国際航空、中国東方航空の3社の輸送力が2020年で最高となった。海外に出ることのできない中国人が国内旅行を楽しんだからである。
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中国系エアラインの台頭は日本にもメリット
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航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram@kitajimaavianwing

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