お別れがたったの10分!? 流行りの「ネット葬儀社」の注意点を専門家が解説
「お葬式が最安〇〇円」「セットプランで明朗会計」——。
スマートフォンで検索すると、こうした謳い文句の広告サイトがヒットする。インターネットで集客し提携葬儀業者に仲介する、いわゆる「ネット葬儀社」だ。全国一律のサービスと料金が特徴で、大手資本やIT企業など他業種から続々と参入している。
リーズナブルな価格にわかりやすいサービスというメリットは大きいが、なかには残念な思いをしてしまった人も少なくない。そんな後悔を避けるためにも、数々のユニークな葬儀を手がけてきたクローバーグループ「小金井祭典」代表・是枝嗣人氏の『日本一笑顔になれるお葬式』から、「ネット葬儀社」を利用する際、後悔しないためによく起こるミスマッチの例を紹介しよう。
全国一律のサービスを掲げるネット葬儀社のスタイルは、一見わかりやすくて便利ですが、地域の文化や風習まで汲み取れないのが実情です。お葬式のことがわからないまま、検索結果が上位だからと信頼し、ネット葬儀社に頼み、「こんなはずじゃなかった」と悔いることが最近増えています。
まずネット葬儀社の仕組みから見ていきましょう。
スマホやパソコンで検索したネット葬儀社に電話をかけると、コールセンターにつながり、簡単なプランと日時、料金について10分程度の話し合いでプランが決まります。ただお葬式は、地域によって風習が大きく変わるのですが、コールセンターの担当者は、その地域の風習を知らないことが多いです。
その後、実際にお葬式を担当する地元の葬儀社からも連絡が来ますが、この時点ですでにプランが決まっているので、主にスケジュールを確認するだけです。ここで故人や残されたご家族が要望を伝えても、火葬場や式場の都合で聞き入れてもらえなかったり、聞き入れてもらえてもオプションとなることが多いです。
それでは実際のミスマッチの例を見ていきましょう。
70歳を超えた団塊世代には、祖父母のお葬式のときに大人数に弔問に来られて、煩わしい体験をした人が多くいます。そのためある方は、ご家族だけでお別れをしようと、ご近所にも会社にも知らせずに、ネットで見つけた葬儀社に依頼し、近親者だけでの家族葬を選びました。
でも、故人は地元の名士で、地域社会の発展に貢献してきた人。本来なら葬儀には1000人を超える参列者が訪れていたでしょう。にもかかわらず家族葬を選んだことで、どんなことが起こったと思いますか?
お葬式に参列できなかった人たちが「お線香だけでも」と週末ごとに家を訪ねてくるようになりました。1回に3人ぐらい、入れ代わり立ち代わり。しかも「先生には本当にお世話になったんですけどね」「最後ぐらいお顔が見たかったわ」と、葬儀に呼ばれなかった不平不満を言われるのです。こういう期間は3か月ほど続きました。
葬儀式場でしたら、参列者の対応は50分で終わったはずなのですが、家族でのお別れの時間を大切にするために煩わしいことを省いてみたところ、余計に煩わしい思いをすることになったのです。
たしかに、お葬式で参列者の対応をしていると、「ちゃんとお別れできなかった」となってしまいます。こういうケースをなくすには、家族だけでのおみおくりの機会を別につくり、そのあとでお葬式をすればよいのです。
きちんと家族だけでお別れができれば、「なんで会ったこともない息子の会社の社長に、こんな日に挨拶しなければならないの」が、「お父さん、息子の会社の社長さんまでわざわざ来てくれたわ」という感謝の気持ちに変わっていくでしょう。
ネット葬儀社の仕組み
家族葬はかえって煩わしい?
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