「死んだらウイスキーで浸して…」 最後の願いをかなえる “自由なお葬式” とは
理想のお葬式とは何だろうか。近年、ごく少人数の身内で行う「家族葬」や、通夜・告別式をせず火葬場へ向かう「直葬」など “シンプル化” が進むなか、世の中には、参列者が涙したあとで笑顔が溢れる、そんなお葬式もある。
『日本一笑顔になれるお葬式』を上梓したクローバーグループ小金井祭典代表の是枝嗣人氏は、これまで故人やご遺族の希望に寄り添い「唯一無二のお葬式」をコーディネートしてきた。是枝氏が手がけてきた笑顔になれるお葬式とは?
私が営む小金井祭典では、ご遺族の意向を徹底的にヒアリングしたうえで、100人いれば100通りのお葬式を作り上げることを目指しています。なかには私の提案に対して「え、こんなことしていいの?」と、ご遺族が驚かれることもあります。
ウイスキーが大好きなおじいさんが亡くなられたときのことです。その方は生前、「オレが死んだら、ウイスキーに浸せ」と、遺言なのか冗談なのかわからない言葉を残していました。「おじいちゃんと一緒にお花見したかったよね」というご家族の願いをかなえるため、お寺であげたお葬式では、祭壇に満開の桜を飾りました。
翌日の葬儀では、おじいさんとの約束を守るために、棺にウイスキーがなみなみと注がれました。棺の中はもう、シロップを浸みこませるフランスの焼き菓子「サヴァラン」のように、ウイスキーでひたひたの状態です。火葬炉の温度は高温ですから、棺にお酒を注いでも問題はありません。
おじいさんが願い通りにウイスキーに浸されていくのを見ているご家族の表情がどん どん晴れていきます。「ああ、こんなことをしてもよかったんだ」と、安心されるのです。「これで心ゆくまでおじいちゃんにサヨナラが言える」と笑っておられました。
別の葬儀では、バイクのエンジン音を吹かして出棺したこともあります。
故人は、海外で起きたバイク事故により亡くなられた若い男性です。多趣味な方で、特にアウトドアが好きだったようです。ご両親が最後は思いっきり息子らしいことをさせてあげたいと大きな式場を借り、お兄様が式場の入り口にキャンプ用のテントを張って、横にバイクを3台並べました。
そして式を終え、まさに出棺のときに、霊柩車の運転手さんが「バイクのエンジン音でおくるのはどうですか?」と提案してきました。この運転手さんもバイクが趣味で、式場に飾ってあった故人の出場レースの写真を見て、自分もかつて出ていたと教えてくれました。ちょうど霊柩車を出すため、故人のお兄さんにバイクを片付けてもらっていたので、お兄さんに相談すると、「そうしましょう」と賛同してくれました。
バイク事故で大切な人を亡くしており、バイクのエンジン音を聞けば嫌な思いをする人もいるのではないかと心配になりましたが、ブンブンッとスタッフが3台のバイクを空吹かしさせていると……。それを見ていた女性が泣きながら、「私にもバイバイさせてください」とアクセルを回します。「彼はバイクが好きだったんです。バイクが悪いんじゃない」と涙を流していました。
棺の中が焼き菓子「サヴァラン」のように
バイクのエンジン音で出棺する
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『日本一笑顔になれるお葬式』 街の葬儀屋さんが教える「心がスーッと楽になる」お葬式の作り方 |
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