更新日:2021年12月13日 14:39
ライフ

ペットと同じ墓に入るという選択。ペット共葬霊園の住職に聞く新しいお墓事情

檀家の寺や家族から埋葬を断られる

ペット遺骨

男性の愛猫は荼毘に付した後、今もこうして手元に置かれている

 ここ数年のペットブームの影で、意外な問題が浮かび上がってきている。愛するペットの遺骨問題である。都内に住む40代の会社員男性は10年以上前に亡くなった愛猫の遺骨を、今なお抱えているという。 「飼っていた猫が亡くなった時は賃貸に住んでいました。お骨は業者に頼んで火葬してもらい骨壺に入れて保管しています。ペット霊園も考えたのですが、管理費や場所などを考えると躊躇してしまいました。  将来的にマイホームを購入して庭の片隅に埋めて植樹しようと妻と話していたんですが、いろいろとあってマンションを購入することになったんです。だから、もちろん埋葬できないですよね」    そこで男性は実家と檀家の寺にも相談したのだが、けんもほろろに断られたという。 「思い切って田舎の実家の墓に入れてもらえないか、檀家になっている寺に聞いてみたところ『動物の骨と仏様のお骨を一緒にはできない』と断られました。もちろん実家の家族からも反対されました」  そこで男性は愛猫の遺骨処理をあれこれ探すことになったのだが、またしても壁にぶつかることとなった。 「散骨も考えたのですが、猫を海に……というのも変ですし、ましてや捨てるなんてどう考えてもあり得ない。子供たちに引き継ごうにも、彼らが生まれる前に飼っていた猫ですからね。押しつけることはできませんよ」  都内に住む50代の会社員男性は憂鬱な面持ちで話し始めた。 「一昨年、17年間一緒に暮らした柴犬が亡くなったんです。その遺骨をどうすればいいのかと。最近ではペット霊園もあるので、そちらで埋葬しようとも考え、いくつかの霊園も見学に行ったんです。  でも、私たちは子供がいない夫婦ですので、私たちが死んでしまった後に離ればなれになることを考えたら、どうしても踏ん切りがつかなくて……」  結果、愛犬の遺骨は骨壺に入れたまま、自宅に安置されているという。こうした、いわば“宙ぶらりん”な状況に置かれたペットの遺骨は想像以上に多いのかもしれない。

ペットと共葬できるお墓も増えている

 こうしたペットの遺骨問題を背景に、同じ墓地内にペット墓地を併設する墓地や寺が近年増えているが、中でも注目されているのがペットと共葬できる墓地だ。 「ここ数年、お墓自体の形が変わってきていまして、今は1平米とか小さいお墓が主流になっています。その中で樹木葬とかペット共葬というのが出てきています。檀家さんの中でもペットと一緒に入れたらいいなという話は伺っていまして、そういった声を聞いて墓地をつくるのも、ひとつのやり方かなと」  こう語るのは茨城県龍ケ崎市で大規模なペットと共葬できる霊園「金光山墓苑」を手がける天台宗、金剛院の荒槇純勝住職だ。
金剛院

金剛院の荒槇純勝住職

 金剛院の歴史は古く、800年以上の歴史がある由緒正しい寺である。ペットとと共葬できる墓地を作ったことで、ペットを飼っていない檀家や、天台宗本山などからは反発はなかったのだろうか。 「それはなかったですね。昔は敬遠されていたのは事実です。『ペット=子供』ではありませんけど、最近は『ペットは家族』という考え方が浸透しているのではないでしょうか」
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檀家ではなくとも入れる
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日刊SPA!編集。SPA!本誌では谷繁元信氏が中日ドラゴンズ監督時代に連載した『俺の職場に天才はいらない』、サッカー小野伸二氏の連載『小野伸二40歳「好きなことで生きてきた~信念のつくり方~』、大谷翔平選手初の書籍となった『大谷翔平二刀流 その軌跡と挑戦』など数多くのスポーツ選手の取材や記事を担当。他にもグルメ、公営競技の記事を取材、担当している

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