更新日:2022年08月29日 17:36
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大往生タイキシャトルの忘れられない思い出。名馬を偲ぶ伝説のレース3選

伝説的スーパーマイラー・タイキシャトル

タイキシャトル

8月17日にこの世を去ったタイキシャトル 
写真提供:認定NPO法人引退馬協会

 先日、20世紀末に大活躍した名馬タイキシャトルの訃報が届きました。タイキシャトルは1994年生まれの牡馬。マイルCS連覇のほか、安田記念、スプリンターズS、そしてフランス・ドーヴィル競馬場のジャック・ル・マロワ賞など短距離~マイルのビッグレースを国内外問わず次々に制した名馬でした。ちょうどバスラットレオンがジャック・ル・マロワ賞に挑戦し、24年前に同レースを制したタイキシャトルの快挙が再びクローズアップされていた矢先のことでした。
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名馬の死を悼んで競馬場に設けられた記帳台

 そこで今回は追悼企画ということで、改めてタイキシャトルの現役時代の偉業を振り返ってみたいと思います。キャリア13戦で11勝、勝っても負けても伝説を作り続けた名馬タイキシャトル。今回は個人的な思い入れや、ぜひ見てほしいという視点で、そのなかでも珠玉の3レースに絞ってお伝えしたいと思います。

まさに隙なし!名馬への階段を駆け上がり始めた1997年マイルCS

 第3位は、1997年のマイルCS。同レースを連覇したタイキシャトルですが、その一度目の勝利を選びました。  この時がG1初挑戦となったタイキシャトルは、まだ一介のマイル路線の有力馬に過ぎませんでした。当時はデビュー以来6戦5勝。前々走でダートの重賞ユニコーンSを制したあと、前走では初の古馬対戦&芝替わりを克服してスワンSを制覇。 「もしかしたら大物かも?」という期待の一方で、まだ半信半疑の側面もあった……というのが当時の状況です。その証拠にこのマイルチャンピオンシップでは、これまた同世代の大物マイラーとして期待されていたスピードワールドに1番人気の座を譲っていました。  しかし、いざゲートが開くと他の17頭をまったく寄せ付けないレースを見せます。道中はスンナリ4番手につけると、手応え抜群に直線へ。最後は余裕をもって逃げるキョウエイマーチを交わして2馬身半差のゴール。まさに隙のない横綱相撲という言葉がふさわしい勝利でした。  今思えば、この「隙のなさ」こそがタイキシャトルの最大の特徴だったように思います。スタートをキッチリ決めてスンナリと好位につけ、折り合いも自在、馬群の中でも悠々と走り、鞍上のゴーサインには瞬時に反応する。ディープインパクトのように大外から追い込む派手さはない一方で、まったく危うさのないレースぶりは競走馬の完成品のよう。  競技は違えど、例えるならばそれは横綱貴乃花の取り口のようでした。対戦相手を寄り切った後は優しく手を差し伸べる平成の大横綱のように、タイキシャトルの勝ちっぷりは常に余力十分。2着以下を蹴散らすというよりは、敗れた馬たちを引き連れて悠々と涼しい顔をして駆けて行くような優しさが感じられたものです。  ちなみにこのレース、2番手を追走していたのはまだ逃げ馬として覚醒する前のサイレンススズカでした。同世代、同じ栗毛のスーパースターと天国で25年ぶりの再会をできているでしょうか。
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負けてなお伝説を残した引退レースのスプリンターズS
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