更新日:2022年11月14日 12:04
エンタメ

女子高生の青春「プリ」の今。スマホがあっても「あえて撮る」ワケ

 かつてノートや手帳に“プリントシール(以下、プリ)”を貼り、シールや落書きで可愛くデコレーションした「プリ帳」を持ち歩いていた人も多いはずだ。  女子高生の遊びといえばショッピングやカラオケ、おしゃれなカフェ巡りなどが定番だが、プリは現在も不動の人気を誇っている。  プリの歴史を辿ると、1995年にアトラス(現セガグループ)が「プリント倶楽部」を世に出したのが始まりで、メディアへの露出や安室奈美恵のファッションを手本とする「アムラー」ブームも相まって、当時の女子中高生の間で大流行。プリは一大ムーブメントを巻き起こした。
疋田裕貴

フリュー株式会社 管理本部広報部の疋田裕貴さん

 1997年にプリントシール市場へ参入し、今ではプリントシール機(以下、プリ機)の設置台数の国内シェアが94%(2021年夏 フリュー調べ)と、圧倒的な支持を得ている企業がフリューだ。
プリントシール機

フリューが企画・開発するプリントシール機

 同社の管理本部広報部・疋田 裕貴さんは「女の子にとって、プリ機の中でお友達と一緒に撮影し、“盛る”を楽しむ体験は、今も昔も変わらない普遍的な楽しさになっている」と話す。

似顔絵を売りにした初代シール機は失敗に終わる

似テランジェロ

「似テランジェロ」の似顔絵シール。社内の評判は上々だったが、人気は出ず……

 1997年に大手電気機器メーカーのオムロンの新規事業開発「コロンブスプロジェクト」が、フリューのプリ機ビジネスの先駆けになっている。  他社と差別化を図るべく、オムロンの持つ顔認証の技術力を前面に出した初号機「似テランジェロ」を開発。  写真から読み取った顔情報から写真を似顔絵に変換し、それをプリントシールとして出すというユニークなもので、社内の前評判は上々だったという。  しかしいざ蓋を開けてみると、肝心の女子高生たちにはまったく受け入れられなかったとか……。 「似顔絵のバリエーションも増やして世の中に出したんですが、結果としては失敗作となってしまいました。原因は男性目線だけでプリ機を開発していたこと。なぜ『似テランジェロ』を使わないのかについて、当時の女子高生へ聞いたところ『そもそも似顔絵のシールなんていらない』という回答が返ってきたんです。  こうした反省を踏まえ、1998年に発売した次の機種から、女子高生へのグループインタビューを週1回以上行うようになりました。プリ機を開発する上では『女の子の目線に立って考える』ことをとても重要視していて、今でも年に200回以上(2021年度実績)のグループインタビューを実施しています」(疋田さん、以下同)

年に200回以上のインタビューで女子高生の感性を拾う

 通常グループインタビューを行う際は、消費者ニーズやインサイトを拾って、製品化に生かすことが多い。  他方、フリューの場合は「企画者が今の女の子と同じ目線を持てるようにする」こと、そして「開発している内容をブラッシュアップさせる」ことの2つが主な目的になっているそうだ。 「グループインタビューには、調査担当の担当者やプリの企画者・開発者も同席しておりまして、学校で流行っているものを聞いたり、カバンに入っているものを見せてもらったりして、“女の子の今”を把握できるように意識しています。また、実際に試作中のプリ機を試してもらい、リアルな声としてフィードバックをもらっています。そうすることで、提案したい機種コンセプトをぶらさずにどうすれば女の子に寄り添えるかをすり合わせているんです」  一方、新しいプリ機を作るのに企画から開発まで約1年~1年半ほど時間がかかるそうで、流行のスピードが早いガールズトレンドの先読みが重要になってくるだろう。  だが、未来への見立てや予測よりも「1年後にどんな機種を作れば、女の子に喜んでもらえるかを考えている」と疋田さんは語る。 「未来は誰にもわからないので、トレンドを予測するのではなく企画の段階で機種の方向性を決め、女の子の目線に立ちながら具現化していくプロセスでプリ機を開発しています。その際、女の子と同じ気持ちになっていなければ、心を掴むようなプリ機を作ることができないんです」
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75億円規模の売り上げ
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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