「15年で300店舗」串カツ田中が成功を掴んだ3つの要因
化学メーカーで研究開発を行う傍ら、経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は株式会社串カツ田中ホールディングスの業績について紹介したいと思います。
安価な店舗外観がどこか安心感をもたらしてくれる「串カツ田中」は、意外にも東京・世田谷区発祥です。大阪下町の“大衆串カツ文化”を東京に定着させ、全国1,000店舗を目標に拡大し続けてきました。コロナ禍では業績が悪化するも、すぐにV字回復を遂げました。そんな同社の沿革と成長し続けてきた背景について探ってみました。
同社の創業者である貫啓二氏は、大企業から脱サラして大阪心斎橋にショットバーを開いたという異色の経歴の持ち主です。2002年に法人化した後、2年後には東京青山に京懐石料理店の「みな瀬」をオープンしました。京懐石料理店は軌道には乗りかけたものの、リーマンショックで閉店に追い込まれてしまったようです。2007年にはうどん屋を開店させますが、これも失敗に終わりました。
そんななか、2008年にダメ元で開店した「串カツ田中」がヒット作となりました。店名は創業者が営んでいたショットバーの常連であった田中洋江氏に由来します。田中氏の亡き父が持っていた串カツのレシピを参考にしたようです。
1号店を東京・世田谷区にオープンした後、2011年からはFC展開を始め、2014年には50店舗体制になりました。当初は関東を中心に展開していましたが、関西、中部そして北海道にも進出し2015年には100店舗となりました。
2016年にはマザーズ市場に上場、2018年には現社名に変更し200店舗を達成しました。なおファミリー層の客も多かったことから、居酒屋チェーンではいち早く禁煙化を進めています。2019年には東証一部へと鞍替えし現在に至ります。
売上高を見ると、わずか3.5億円だった2011/11期から2015/11期には25.1億円となり、コロナ禍直前の2019/11期には100億円を達成しました。ちなみに串カツは大阪下町の文化ですが(発祥自体は東京と言われる)、「串カツ田中」の店舗数の多くは関東に集中しています。2023/6時点で全店約300店舗に対し、東京・102店舗、大阪・17店舗、愛知・21店舗、福岡・16店舗です。
失敗の末に行きついた大衆串カツ屋が成功
1号店オープンから15年。現在では300店舗に
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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