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自民党にしかできない「維新対策」<著述家・菅野完>

―[月刊日本]―

大阪自民は必ず負ける

自民党

yu_photo – stock.adobe.com

 先に結論から書いておこう。  逆立ちして大阪環状線を二周しようがなんだろうが、自民党は、大阪の衆院選で、維新に勝つことはできない。  単純な話である。大阪における維新が、強すぎるのだ。  コロナ禍の3年間、吉村府知事はテレビに出ずっぱりだった。道頓堀なりなんなりの大阪の観光地を歩いてみればいい。そこかしこにTシャツだのマグカップだのの「吉村知事グッズ」が販売されており、それがまた飛ぶように売れている。なんの不思議なこともない。「毎日テレビに出ている人」のグッズがあればそれに群がる人がいるのは当然のことだ。それほどまでに吉村知事はこの3年間、テレビに出続けた。  こんなことは日本はおろか世界中にも類を見ない。強いて近しい事例をあげれば、コロナ禍初期のNY州のクオモ知事(当時)の事例がそれに近いとは言えるだろう。しかしクオモ知事の事例は、「州政府の記者会見」の内容が科学的で客観的で全米レベルのコロナ流行状況を把握するのに簡便であったため、CNNなどのメディアが連日取り上げたという事例である。あくまでも被写体は「記者会見」だったわけだ。しかし吉村知事の場合は違う。記者会見が連日テレビに流されるだけでなく、ワイドショーや夕方のニュース番組のスタジオに登場し、あらゆる機会をつかまえては露出することに努めた。  その破壊力は計り知れない。定量的に表現すれば、今年春の大阪知事選挙における吉村知事の得票数は2439444票であり、大阪府知事選挙の過去最高記録だった横山ノックの2期目の選挙(1999年)の得票数2350959を10万票近くも凌駕しているのだ。吉村知事の得票数を横山ノックのそれと比べる表現は、関西文化圏の外の人、あるいは若年層には伝わりにくいかもしれない。が、あの頃の横山ノックの人気絶頂ぶりを覚えている人であれば、この定量的な評価がいかに衝撃的であるかご理解いただけるだろう。

府知事が連日ローカル局に登場し続ける日々

 先ほどの横山ノックの比喩が理解できなかった向きには、こう問いかけよう。お住まいの地域のローカルテレビ局――岩手ならめんこいテレビ、石川ならテレビ金沢、広島なら広島ホームテレビ、福岡ならRKB――の電波に、お住まいの地域の首長が、首長記者会見の配信という形ではなく、ワイドショーやニュース番組のスタジオゲストとして、連日登場しつづける日々があなたには想像できますか? と。  さらに異常なことがある。吉村洋文は、大阪府の首長であると同時に、政党の代表でもあるのだ。特定政党の代表が、毎日毎日来る日も来る日も、ワイドショーやニュース番組のゲストとして登場しているわけだから、その電波の届く範囲におけるその特定政党の「選挙の強さ」がいかほどか、容易に想像できるはずだ。つまりは維新という政党は、大阪を中心とした近畿圏において、政党まるごと「タレント候補」の色彩を帯びてしまっているのだ。この強さに「選挙そのもの」で太刀打ちする術はほぼない。あるとすれば、ロサンゼルス・エンジェルスに200億円ほど払って大谷翔平を口説き落とし選挙に担ぎ出すぐらいしかあるまい。それほどまでのことをしなければ、「タレント政党・維新」の大阪における強さには、自民党といえども、「選挙そのもの」では太刀打ちできないのだ。
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大阪自民に方策はありや?
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