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「向いてない仕事をやるのはきつい」“じゃないほう芸人”が放送作家として大成するまで

お笑い芸人・構成作家の佐藤満春氏の自叙伝エッセイ『スターにはなれませんでしたが』(KADOKAWA)がスマッシュヒットしている。現在は『ヒルナンデス』『キョコロヒー』『オードリーのオールナイトニッポン』など数多くの人気番組の構成を担当し、トイレ・清掃のスペシャリストとしてメディア出演する機会も多い彼だが、ここにたどり着くまでにはさまざまな苦労があったようだ。前回の記事に引き続き、お笑い芸人として事務所に入った彼が作家業を始めるに至った経緯を紐解いてみた。
佐藤満春氏

佐藤満春氏

スターになることは「最初からあきらめていた」

——著書のタイトルは『スターにはなれませんでしたが』ですが、佐藤さんはそもそもスターになりたかったんでしょうか。 佐藤満春(以下、佐藤):ずっと目の前のことをやるのが精一杯で、その先にどうなっていくかみたいなことは考えてなかったんです。冠番組を持てるようになりたいとか、MCをやりたいとか、そういうことは1ミリも思っていなかった。「俺が一番面白い」などと、調子に乗っていた瞬間すらなかったので、始めたときからすでに諦めていたいたのかもしれないですね。

“暗黙のルール”がまかり通っていた時代だった

佐藤満春氏——佐藤さんがどきどきキャンプとしてテレビに出始めたころって、「芸人なら自分からどんどん前に出て目立とうとするべきだ」というような暗黙のルールが今よりも強かったですよね。そういう時代だからこそ、佐藤さんのようなキャラクターの人がなかなか個性を認められなかったりしたというのもあるんでしょうか。 佐藤:今は多様化の時代になりましたけど、当時は「芸人はこうすべき」とか「芸人なんだから」みたいな同調圧力が強くて。世の中の空気もそうだし、お笑いファンの目線もそうだし、社会全体がそうだったので、僕みたいなのは最悪のケースだったと思います。 今は時代が変わって、こういう人間がいても大丈夫という空気になったのはありがたいですけど、逆に言うと僕自身の希少性は薄くなるので、価値も薄まっていくのかなとも思いますね。
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ありがたかった「じゃないほう芸人」
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お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『教養としての平成お笑い史』など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで

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