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「向いてない仕事をやるのはきつい」“じゃないほう芸人”が放送作家として大成するまで

ありがたかった「じゃないほう芸人」

『スターにはなれませんでしたが』(KADOKAWA)

『スターにはなれませんでしたが』(KADOKAWA)

——そんな中で『アメトーーク!』の「じゃないほう芸人」という企画では、佐藤さんがご自分の持ち味を出すことができたんですよね。 佐藤:あのときはお笑いブームだったというのもあって、「影が薄い」というネガティブな要素にすら、「フレームさえ作ってもらえれば面白くなった」という状況はありがたかったです。あと、好きなトイレのことを話していたら面白がってくれて、「トイレの紙様芸人」という企画ができて。そこからトイレや掃除に関するお仕事も頂けるようになったんですけど、それも『アメトーーク!』が縁取りをしてくれたおかげですね。

「もうテレビに出たくない」と言った結果…

——そのころ、事務所のマネージャーに「もうテレビに出たくない」と言ったそうですね。タレントが事務所にそういうことを言うのは珍しいんじゃないですか? 佐藤:芸能界には「野望があるからこの世界に入ってるんだよね」という前提があります。それゆえに、「向いてない仕事をやるのはきつい」という僕の思いがなかなか伝わらなかったんですよね。 テレビの仕事で丸一日拘束されて3秒しか映らない、もちろん大したお金にもならない、とか。そういうのに行くぐらいだったらその時間をほかのことに使いたいって思っていても、急に仕事を入れられちゃうみたいなことが何年も続いたんですよね。それはじっくり話して話して、ようやくスケジュールを聞いてもらえるようになりました。 ——それは話し合いを重ねてちょっとずつ歩み寄っていった感じなんですか? 佐藤:というか、理解はされないまま何年も経ってしまった感じですね。そんな人が今までいなかったというのもあるだろうし。なんで冠番組を持ってMCになるという未来を描かないんだ、という疑問を持たれていたと思いますね。「無理なんですよ」と言っても「がんばればいいじゃん」みたいな。そうじゃなくて、がんばればみんながオリンピック選手になれるんですか、っていう話なんですけど。がんばり方に対する考え方の種類がなかったんですよね。
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何度も揉めた末にたどり着いた、今
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お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『教養としての平成お笑い史』など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで

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