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「永野VS陣内智則 」ガチ乱闘の行方。バラエティにおける“プロレス”と“暴走する芸人”の必要性

文/椎名基樹  かつて存在したプロレス専門タブロイド紙「週刊ファイト」の編集長だった井上義啓は、プロレスを定義して、こういった。「底が丸見えの底なし沼」と。  プロレスは、筋書きのあるフィックスファイトだ。しかし、時にそこから逸脱した“イビツな試合”が発生する。そのガチンコの喧嘩試合は、スポーツの名の下に行われるリアルファイトよりも興奮度が高い。怒り、憎悪、謀略、イデオロギーのぶつかり合いなど、闘う理由が、人間の生の感情に根ざしているからだ。 「プロレスは虚実が入り混じっているからこそ魅力がある」と、井上義啓は言うのである。

お笑い向上委員会「永野VS陣内智則」の真相は

 そして、そのプロレスの定義は、そのままテレビのバラエティー番組にも当てはまると思う。  6月22日放送の「さんまのお笑い向上委員会」(フジテレビ系)で勃発した、芸人・永野と陣内智則の乱闘劇が波紋を呼んでいる。暴言を浴びせかけてきた永野に対して陣内が襲いかかった。  放送を見たネット民が「ガチでは?」「陣内怖えー!」と、騒いでいるので「TVer」で確認すると……。なるほど、永野に襲いかかる陣内智則の顔面は蒼白で、目が据わっている。  1週間後の29日、鬼越トマホークは、自身のYouTubeチャンネルで永野と陣内の乱闘を解説し、「あれはお笑いじゃないです」と断言。さらに「フジテレビのスタッフから聞いた話では、陣内さんの目がイっちゃってる、どうしようってなって。なんとか放送できる部分を放送したけど、放送できない部分がめちゃくちゃある」と明かした。  同じく29日放送の「さんまのお笑い向上委員会」では、陣内智則が「あれは全然キレてないです。僕が動くことによって何か起こるかなと思ったら、ただイラッとしただけやったんですよ」と釈明。「イラッとしてやった」とは、キレたということだと思えるけれど……。  さらに同放送で、マヂカルラブリーの村上は、収録終わりの2人の様子を回想して、「陣さんが永野さんに『ごめんな』って言いに行ったんですよ。で、別れる時に『これで最後にしような』って陣さんが言ったんですよ」と、騒動が“ガチであること”を匂わせた。  それに対して、陣内智則は「これで最後にしようなって言うのは、こういうノリがっていうこと」と釈明した。「これで最後にしような」というセリフがまた怖い!

ハプニングを巻き起こすオーラこそ「芸人の色気」

 さらに、29日のラジオ『ヤングタウン土曜日』(MBS)の中で、明石家さんまは、「陣内もなんとか笑いになると思ってやりよってんけど、とうとう生まれなかったらしいねん。ほんで痛い、怖いだけ残って、(永野が)ほんまにびびった顔になってしまいよった。陣内もほんまに怒った顔になってしまいよって」と苦笑した。  前述したように、バラエティー番組は虚実が入り混じるからこそ面白い。「どうせ台本なんでしょ?」と思っていたところに、突然生の感情が見えてくるから魅力的なのだ。  だから、バラエティーの世界はいつだって、ハプニングを巻き起こす永野のような狼藉芸人を求めていると思う。そして、テレビに映っているだけで、何をしでかすかわからないオーラを発していることが、「芸人の色気」というのではないだろうか。
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太田光が背負ってきた役目
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1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina

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