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『おむすび』が朝ドラ“史上最低視聴率”を更新しそうなワケ…どの世代にも支持されない理由

 10月に始まった朝ドラことNHK連続テレビ小説『おむすび』が、折り返し地点に到達した。12月19日放送の第59回までの平均世帯視聴率は13.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)にとどまっている。  朝ドラの全回平均のワーストは2009年度下期の『ウェルかめ』の13.5%。現時点ではこれを下回っている。後半はワースト記録を更新するかどうかに注目が集まってしまうだろう。 『おむすび』としては後半からV字回復を目論んでいるはず。だが、ここ1カ月の平均世帯視聴率は13.2%と低調だから、簡単ではないだろう。なぜ、この朝ドラは観てもらえないのか。考察したい。
おむすび

『連続テレビ小説 おむすび Part1 (NHKドラマ・ガイド)』NHK出版

「ギャルの掟」に縛られるヒロイン

 まず登場人物たちに魅力が乏しい。前作『虎に翼』における桂場等一郎(松山ケンイチ)や佐田優三(仲野大賀)らがいない。前々作『ブギウギ』の羽鳥善一(草彅 剛)、茨田りつ子(菊地凛子)に匹敵する存在も不在だ。  長丁場となる朝ドラは、視聴者が登場人物たちを好きになり、感情移入してくれると、ストーリーがひとりでに動き出す。『おむすび』はそうなっていない。  橋本環奈(25)が演じる米田結からして惹かれにくいキャラクターだ。序盤では何事にも一生懸命に取り組む純粋な女子高生だったはずだが、第31回でギャルになり、「アゲー!」などと叫ぶようになったころから、キャラが変わった。空気を読まず、自分勝手なところのある女性になってしまった。  結のバイブルである「ギャルの掟」が背景にあるのだろう。掟はこうだ。 「掟その1 仲間が呼んだらすぐ駆けつける」「掟その2 他人の目は気にしない、自分が好きなことは貫け」「掟その3 ダサいことは死んでもするな」  ポイントは掟その2。他人の目を気にせず、自分が好きなことを貫くということは、協調性や常識の欠如につながる。そんなキャラが許されるのは、せいぜい高校生という設定までだろう。

言いたいことを言ってるだけに見えてしまう

 結のキャラを表す象徴的なエピソードが紹介されたのは第38回(11月20日放送)。神戸栄養専門学校に入学したときだ。登校初日の結はギャルメイクで茶髪、派手なネイルをしていた。  父親の聖人(北村有起哉)は「その格好で行くんか」と目を丸くしたが、結は意に介さなかった。聖人と同じく、鼻白んだ視聴者は少なくなかったのではないか。  学校では新入生の挨拶が行われた。開業医の娘・湯上佳純(平祐奈)は「栄養士になって人類を救いたい」との抱負を披露した。元陸上選手・矢吹沙智(山本舞香)も「スポーツ専門の栄養士を目指しています」と意欲的だった。  一方、結は「付き合っている彼氏が野球をやっていて、プロを目指しているので、彼を支えるために栄養のことを学びたい」と悪びれずに言った。高校時代から交際している四ツ木翔也(佐野勇斗)が、大阪の社会人野球チーム・星河電器に所属し、当時はプロ野球選手を夢見ていたからである。  ギャルメイクでこの言葉だから、同級生たちはあきれた。やはり同じ思いだった視聴者がいただろう。ドラマはリアリティを追求する必要はないが、いくらなんでも現実離れしていた。
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覚悟の感じられない“薄っぺらな”主張
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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