更新日:2012年06月22日 15:43
エンタメ

ハロプロにみるアイドルとプロレスの親和性

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アイドルたちのパフォーマンスはグループごとに個性が違っていて面白い。「POP’nアイドル」のようなイベントはこれからも増えるだろう ※写真はイメージです

 アイドル戦国時代と呼ばれて久しい。CDのミリオンセールスを連発するAKB48とその関連グループ、派生ユニット。グループアイドルの本家モーニング娘。を筆頭にしたハロー!プロジェクト(以下ハロプロ)、ももいろクローバーZ、ぱすぽ☆、東京女子流、SUPER☆GiRLS等々。  多数のアイドルが群雄割拠している現在の状況を、‘90年代後半のプロレス多団体時代と重ね合わせる方も多いのではないだろうか。そして、それを強く印象づける“事件”が起こった。  熱烈なアイドルファンとしても有名なタワーレコード社長・嶺脇育夫氏がオーガナイズした「POP’nアイドル」。SUPER☆GiRLS、スマイレージ、東京女子流、バニラビーンズ、LinQの5グループが一堂に会したライブイベントでのこんな一幕だ。 「推しメンバーは変えるものではなく増やすもの。今日初めて見るアイドルもいるかと思いますが、すべてのグループを推しメンバーとして応援してください」と嶺脇社長も語るとおり、“対バン”というよりは、むしろお祭り要素の強いこのイベント。観客だけでなく、出演するアイドルにもその意識は浸透していたが、そんな“予定調和”の雰囲気を打ち破ったアイドルがいる。ハロプロのスマイレージだ。 「ほかのアイドルのファンの方もいると思うけど、ぜひスマイレージ推しになって帰ってください! (ステージ幕に書かれた“NO MUSIC,NO LIFE.”を指差し)このロゴを“NO スマイレージ,NO LIFE”に変えてみせます!」  当初のライブコンセプトを覆すようなシュート発言。そして、まるでドーピングでもしたかのような、ハイテンションの動きでステージ上を躍動。「平和ボケしてんじゃねぇ」とでも言わんばかりのスマイレージのパフォーマンスに、他のアイドルファンは、ただただ圧倒された。それは、意気揚々と新日本プロレス(以下、新日)のリングに乗り込んできた大仁田厚に対して、「お前とプロレスをやるつもりはない」と、マット上で鉄拳制裁を加えた佐々木健介。もしくは、伝説の「1・4東京ドーム」。ギラついた目で橋本真也と相対し、マウントパンチから失神KO→「もう終わりかよ、オイオイ、冗談じゃねーぞ」と罵声を浴びせた小川直也の姿と重複する。「アイドルファンの皆さん、目を覚ましてください」と言わんばかりの挑発モードだからだ。 「スマイレージの発言は『私たちは……いや、先輩・後輩も含めたハロプロ勢は凄くレベルの高いことをやっている』という自負からくるものでしょう。というのも、この事件には続きがあって、1か月半後に行われた『アイドル横丁祭!!』という同様のイベントに、今度はスマイレージの姉貴分である℃-uteが登場したんです。彼女たちがハロプロ外のアイドルと共演するのは初めてのこと。スマイレージのときのような挑発的な発言こそありませんが、そのパフォーマンス力は“無言の圧力”そのものでした。他アイドルのファンも含めて、会場を飲み込んだのは間違いありません」  そう語るのはアイドル事情に詳しいライターの小野田衛氏。初期UFC大会での優勝後「兄は私の10倍強い」と語り、兄ヒクソンの無敗伝説を色濃くしたホイス・グレイシーよろしく、スマイレージ(妹)から℃-ute(姉)へと続く一連の他流試合の流れで、ハロプロ勢(グレイシー一族)のレベルの高さを見せつけた格好になったわけだ。それにしても、会場の空気を暴風のように一変させるハロプロとは何なのか? 「アイドル界……というより、日本の音楽シーン全体の中で見ても、技術レベルが極めて高いことは異論を待ちません。“吉川晃司に続く広島の麒麟児”と誉れ高い天才ダンサー・鞘師里保(モーニング娘。)、“アレサ・フランクリンを凌ぐ”ド迫力歌唱の持ち主・菅谷梨沙子(Berryz工房)、あのつんく♂氏をして『小2の時から歌唱力があった』と言わしめた“ハロプロの至宝”鈴木愛里(℃-ute)など、他にもあげればキリがありませんが、アイドルの基準値を超えた怪物的エンターテイナーが揃っているわけです」(小野田氏)  技術レベルとは、すなわち歌とダンスの実力。その土壌はどのようにして培われたのか? 「もともとモーニング娘。はテレビ番組の素人参加型オーディションからスタートしたグループ。お祭り的な楽曲で人気を博したものの、メンバーに高い技術は求められていなかった。ところが、黄金期メンバーの卒業ラッシュを経て、グループは“プラチナ期”に突入します。ここで大きな“技術革新”が行われたのです」(小野田氏)  これには解説が必要だろう。プラチナ期とは、メンバーの変動がほとんど行われなかった高橋愛リーダー時代のモーニング娘。を指す。この時代のモーニング娘。は、『LOVEマシーン』のようなメガヒットを飛ばすこともなく、メディアの露出も極端に減った。だが一般的な知名度が下がる一方で、メンバーたちはハードなツアーと濃密な練習を繰り返し、刀を研ぎ続けたのだ。こうして“歌と踊りのスペシャリスト集団”が誕生したのである。  新日の道場最強伝説が後のUWFとなり、総合格闘技の礎を築いたように、プロレスもアイドルも、技術レベルの底上げが新しい潮流を生み出すようだ。 <取材・文/スギナミ> ⇒【後編】へ続く https://nikkan-spa.jp/234818 ファンの視点の変遷から見た現代アイドルのニーズとは!? ― ハロプロにみるアイドルとプロレスの親和性【1】 ―
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