沖縄の歴史的建築物が解体の危機
那覇市の中心部にあり、半世紀にわたって沖縄の児童・生徒たちの文化交流の拠点として機能してきた久茂地公民館(旧沖縄少年会館)。
この歴史ある建築物の解体が「老朽化」を理由に強行され、多くの住民が反対の声をあげているという。
同公民館は米軍占領下の1966年、沖縄の教育関係者が立ち上げた「沖縄子どもを守る会」が日本全国から寄付を集めて建設したもの。1979年に那覇市に無償譲渡された。文教施設の少なかった当時、プラネタリウムや鉄道模型などを備え、本島各地や離島から訪れた児童の宿泊所としても利用されてきた。今では残り少なくなってしまった、日本復帰前の貴重な建築物としても知られている。那覇市はなぜ、住民の反対を押し切って解体を強行したのだろうか。
「市は『あらゆる対策を検討した結果、解体を決めた』と説明していますが、情報公開で入手した公文書や議事録などを見ると、はじめから『解体ありき』で進められてきたとしか思えません。そもそも沖縄少年会館は全国の皆さんの善意によって完成したもので、市が建てたものではない。特に、小中高の児童・生徒から多額の寄付がありました。ほかの建物とはわけが違うんです」(久茂地小学校区自治会長・前上門博氏)
建築家の照屋寛公氏はこう語る。
「この建物は、修繕すれば数十年は問題なく使えます。沖縄の歴史的な建築物はこれまで、どうやって保存し活用していくかという議論が充分されないまま解体され、本当に残り少なくなってしまいました。文化的な価値を無視して『古くなったから壊す』という発想は、魅力ある街づくりとは逆行するものです」
また、久茂地公民館に隣接して今年1月29日に創立100周年を迎えた久茂地小学校があり、那覇市はこれも2013年3月に同市内の前島小学校と統廃合する意向だ(市議会では未承認)。
歴史と文化の重みを軽視した、自治体行政による“地上げ”が沖縄でも進行している。 <取材・文/北村土龍>
※この件についての詳しい経緯は、
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