アベノミクスのインフレは「正義の味方」なのか?
◆マネーな人々 今週の銭格言
【選者】政治経済学者 植草一秀氏
円安・株高の市場反応は今後もしばらく続き、日経平均株価が1万6000円を超えてもまったく不思議はない。安倍首相の鼻息はますます荒くなりそうだが、インフレには、重大な落とし穴があることを見落としてはいけない。
◆絶好調のアベノミクスがもたらすインフレは、本当に正義の味方なのか
安倍政権は2月28日、日銀総裁に黒田東彦氏、副総裁に岩田規久男氏を提示。私がブログ記事に記述した予測は見事に的中した。
安倍首相のこれまでの発言を踏まえれば、政府と関係の深い、インフレ誘導積極派が起用される可能性が高かった。
他方、財務省は日銀幹部ポスト奪還に執念を燃やしていた。安倍政権の特徴は積極的な金融緩和だが、財務省の優遇、官僚利権擁護もまた、ひとつの特徴であることを見落としてはいけない。
日本の株価は’08年以降、明確な為替レート連動の変動を示してきた。円安が進行すると、株価が上昇する。また、株式の益利回りと債券利回りとの著しい格差は、日本の株価が理論値以下の水準で低迷していることを物語っている。菅、野田民主党政権が緊縮財政至上主義の政策運営を示したため、経済心理が凍りついてしまっていたわけだ。
安倍政権の景気対策提示は順当で、これが株価引き上げのきっかけになった。だが、株価急騰の真の理由は、菅・野田政権の政策失敗にあると言っていい。政策運営の下手な政権の後を継ぐ政権は、幸運な政権と言える。
株価が安すぎる水準にあったため、当面は一般の予想を超す株価急騰が生まれる可能性が高い。安倍首相は、自信過剰気味の発言を展開するようになるだろう。
また、日銀が日銀の信用を失う方向に無謀な行動を積み重ねていけば、安倍首相が掲げるインフレ率の引き上げは難しくはない。典型的な事例は政府が日銀から無制限に現金を引き出し、これを人々にばら撒くことだ。そうすれば、間違いなくインフレ率の急騰、日本円急落といった市場反応を得られる。
しかし、「好事魔多し」である。その先には重大な落とし穴がある。
⇒【後編】に続く 「ミニバブルの宴は何年も続かない!?」
https://nikkan-spa.jp/404276 【植草一秀氏】 シンクタンク主席エコノミスト、大学教授などを経て、現在はスリーネーションズリサーチ(株)代表取締役。ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」も人気。著書に『消費増税亡国論』(飛鳥新社)
https://nikkan-spa.jp/404276 【植草一秀氏】 シンクタンク主席エコノミスト、大学教授などを経て、現在はスリーネーションズリサーチ(株)代表取締役。ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」も人気。著書に『消費増税亡国論』(飛鳥新社)
『消費増税亡国論』 植草一秀が野田政権を切る! |
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