課題山積。少額投資非課税制度「NISA」の問題点とは?
テレビをつければ、目にしない日はないくらい銀行や証券会社がCMで宣伝している「NISA(ニーサ)」。「日本版ISA」や「少額投資非課税制度」とも呼ばれ、「貯蓄から投資」を促す政府肝入りの目玉政策である。そもそもどんな制度なのか? カブドットコム証券・チーフストラテジストの河合達憲氏に聞いた。
「例えば、100万円を株に投資し150万円になったとしたら、利益50万円に対して20%の税金がかかります(平成25年末までは10%)。これを非課税にしようという制度が『NISA』です。この非課税制度によって個人投資家の裾野が広がることが期待され、政府はNISAによる投資残高の目標を25兆円と設定しています。今年10月から申し込みが始まり、平成26年から平成35年までの10年間限定で導入されます。非課税になる『NISA口座』は一人1口座しか開けない予定でしたが、複数の金融機関でも開設できるようになる方向で調整されることになりました。また、非課税になる投資対象は株式や株式投資信託などに加えて、国債や社債など比較的リスクが低い公社債投資信託(債券ファンド)も加わる方向で検討が進められています」(河合氏)
NISA普及を後押しするため、「一人1口座のみ」「株や株式ファンドのみ」といった不便さが改善される見込みだが、それでもまだまだ使い勝手が悪く、個人投資家からは不満が噴出している。その背景として、「非課税にして投資を促したい金融庁と、税収を減らしたくない財務省との対立がある」と指摘するのは、株式ジャーナリストの大神田貴文氏。
「非課税になるのは、年間100万円の投資元本についてまで。つまり、いくら資金があっても、1年間で最大でも100万円に対しての配当や売却益の分しか非課税にはなりません。また、平成26年から平成35年までの10年間の制度ですが、非課税期間は最長で5年まで。つまり6年目の段階では、2~6年目の5年間に投資した金額(各年最大100万円)しか非課税にならないのです。これらは、貯蓄から投資を促したい金融庁と、それに抵抗する財務省の対立ゆえの迷走です」(大神田氏)
すでに株式投資などをしている人も多いと思うが、今保有している銘柄や投信はNISA口座に移せなかったり、NISA口座で損失を確定したとき、今持っている(特定口座の)銘柄と損益通算できなかったり、NISA口座で塩漬けしている銘柄を信用の担保にしようと思ってもできなかったりと、投資家にとって致命的な点は多く、課題は山積している。
「そして何よりも面倒なのが、NISA口座を開くのに住民票が必要なことです。本人確認のためとはいえ、これまで投資をしたことがないような人がわざわざ役所に行って住民票を取ってまでしてNISA口座を開くかは大いに疑問です。免許証や保険証で本人確認できるくらいに簡単になってほしいものですね」(大神田氏)
財務省の役人からは「金融庁の役人の実績作りのためではないか」というやっかみも聞こえるほど。アベノミクスで投資への関心が高まっているが、“投資家不在”の不便な制度にはならないことを願うばかりだ。 <取材・文/横山 薫>
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