オカモトに聞く「コンドーム“薄さ競争”の激化」――荻上チキのアダルトメディア探訪
【週刊SPA!連載】
★週刊チキーーダ! 飯田泰之・荻上チキのヤバい研究報告書
久しぶりのシリーズ企画「エロスの夜明け」。コンドームの国内シェア5割を誇るオカモトの探訪だ。昨年度のコンドームの国内出荷数は260万グロス(1グロス=144個)と、ここ10年で2割減。厳しい環境下で、創業80周年のトップメーカーはどう舵をきるのか? 医療生活用品部マーケティング推進室の林知礼氏に聞いた。
◆荻上チキのアダルトメディア探訪「エロスの夜明け」~オカモト編~
チキ:まずは、会社の歩みと事業内容について教えてください。
林:世間的には「8割コンドーム」というイメージかと思うのですが、昨年度の総売り上げ約775億円のうち、コンドームは約10%。手袋に壁紙、農業用のビニールの原反、クルマの内装材など、事業は多岐にわたり、例えば日本国内で生産されているオートバイシートの素材の約95%以上は、うちの製造です。
チキ:コンドームは個人が使うもので、身近だからわかりやすくて、前面に出ているんですね。
林:その意味で知名度を上げているのは、紛れもなくコンドームで中核事業であることは確かです。
チキ:コンドームの薄さなど技術の進歩はユーザーに強烈な印象を与え、知名度に貢献しますよね。
林:業界的にも厚み競争が激化する流れにありますね。
チキ:今は何ミリの争いですか?
林:薄さだけで言いますと0.01mmですね。ただ、細かいことを言うと主流のラテックスというゴム素材よりもやや固い、ポリウレタンという素材なんです。現状販売されている0.02mm以下のコンドームは、プラスチック製素材のポリウレタンなんです。伸びやしなやかさはラテックスが上ですが、ポリウレタンはゴム臭がなく、熱伝導性がいいんですね。
チキ:あったかーい、みたいな?
林:体感できるかは微妙ですが(笑)、素材特性はそうですね。
チキ:そもそも、御社でコンドーム製造を始めたのはなぜですか?
林:ゴム加工の仕事をしていた創業者の岡本巳之助が、当時(1930年頃)の粗悪なコンドームを改良しようと、研究を始めたのがきっかけだそうです。ただ、うちがコンドームメーカーとして特出したのは、コンドームを最初に作ったことではなく、良質なコンドームをたくさん製造できる自産機を作ったことなんです。当時、コンドームは軍需商品という面もあり、大量生産できる弊社には材料が供給され戦時中も生産を続けられた。配合や加工の技術が蓄積されて、今に至るわけです。
チキ:なるほど。現在の薄さ競争の中でご苦労とかはありますか?
林:コンドームはその製造方法から、どうしても先端が厚くなる傾向があります。国際規格(ISO23409:2011及びISO4074:2014)では先端から30mmと根本から30mmと真ん中を測った平均値を厚みの基準としていますが、うちは、その3点で均一な厚さに仕上げています。技術的には難しいのですが、均一にすることで強度が増すんです。
チキ:素人考えだと、先端が厚いほうが破れにくそうですが、逆に厚みにムラがあると、負担が偏り、破けやすくなるんですね。
林:あと、他社さんの製品と比べるとうちのは、標準サイズで1~2mmくらい直径が小さいんです。
チキ:そうなんですか!?
林:コンドームの使用で心配なのは脱落です。でも、脱落しないようにキツくすると使用感は悪くなる。うちは径は小さいけれど締め付けない、伸びがよく、しなやかであることにはこだわっています。ときどき、「窮屈だ」というご指摘もあるのですが、そのときは「ご立派ですね」としか(笑)。
⇒【後編】「“薄さ”だけではない、進歩するコンドームの機能」に続く
https://nikkan-spa.jp/728824 【林知礼氏】 オカモトスクール(https://www.okamoto-school.com/)は2008年にスタートし、ここ3年は日本大学経済学部の学園祭「三崎祭」でリアルスクールも行っている。今年は11月2・3日に開催 【飯田泰之】 ’75年生まれ。エコノミスト、明治大学准教授。「薄さがどうしても注目されるコンドームだけど、僕は装着感最優先のリアルフィット派です」 【荻上チキ】 ’81年生まれ。評論家、『シノドス』編集長。「高校生のとき、未成年がコンドームを買うと通報されると思い込み、必死で自販機を探したのはいい思い出」 撮影/落合星文
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