女性向けのAVはどう消費されていくのか?
【週刊SPA!連載】
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チキ:話を伺っていると、マーケティング先行ですよね。社内女子会も含め、リサーチした「女性が望んでいること」がハマった。
牧野:日々のうっぷんや膿、妬みや嫉みなど、女の人の成仏しない気持ちを映像にして、南無南無してる感じがすごくありますね(笑)。
チキ:エロ供養だ(笑)。
牧野:叶わない夢を叶えられるのが、創作物のいいところですから。だから、男優さんも女優さんも親しみやすさが第一。物語や演出もシンプルなものがいいと思っています。AVって味付けをのせていく感じなんですけど、うちは「出汁の味を生かしてます」みたいな(笑)。それが、難しいんですけど。
チキ:AVって単体で1作目デビューして、2作目でゴックンや3P、シチュエーションドラマとかをやって一巡したら、さらにハードになってという開拓系ですが、女性向けでは「もっともっと」はニーズが違う感じがしますね。
牧野:「ハードな一徹さんが観たい」とか「女性向けなのになぜ騎乗位がないの?」とか「主導権を女に」といったご意見も、あることはあります。
チキ:なるほど。「騎乗位=主導権」という考え方なんですね。
牧野:そういう方もいて勉強になりますが、うちはあくまで「AVの高校」、入り口なんですよね。
◆シルクラボの浸透は、シルクラボの終わり
チキ:SEXに対してポジティブな層は、「実はみんな欲望を隠しているけど、本当は自分たちのようになりたいに違いない」と、自分たちの欲望をパターナリズム的に押し付ける傾向はありますね。
牧野:私自身、「AV業界の感覚は特殊だ」「私は変態だ」っていうのを常に自分に言い聞かせています。
チキ:性に奔放な人は100年後もいるし、100年後も頬を染めてこっそり、という人もいる。そこは混同させちゃいけない点でしょうね。
牧野:お菓子のハッピーターンって、ずっと変わらないように見えますよね。でも、実はハッピーポケットができてハッピーパウダーがより吸着されるようになったり、改良されているんです。
チキ:パウダーが増量されたり。
牧野:変わらないように見えても、愛される努力は惜しまない。うちもその姿勢でコツコツやって、「あれ? シルク ラボ観てないの?」みたいな感じになるのが理想です。
チキ:種をまき続けていく、と。
牧野:そして、シルク ラボが男性も含め一般的になって、エロメンのように常に爪を磨いて清潔に保つような男の人ばかりになると、多分、シルク ラボは潰れるんです。現実と同じになっちゃうから。
チキ:シルク ラボの浸透が、シルク ラボの終焉となる。
牧野:で、シルク ラボは方針を変え、鬼畜作品メーカーになる(笑)。
チキ:「エロメン」ならぬ、「キチメン」ブーム到来だ。
牧野:ドSイケメンがあなたのケツを叩くみたいな作品(笑)。「COCOON」「シルク」から、「モスラ」の誕生(笑)。モスラレーベルも、いつかやりたいですけどね。
【荻上チキ】
’81年生まれ。評論家。「6月間近でも花粉症が治まりませぬ。四季のうち本気出せるシーズンっていつだろう」
【牧野江里氏】
シルク ラボ社長。2006年にSODクリエイト入社。AD、宣伝広報の仕事を経て、「シルク ラボ」を立ち上げる。プロデューサーとして制作やイベント運営に携わるほか、自ら監督を務めることも。2013年に社長に就任。著書に『女子の保健体育』がある
●シルクラボ
2009年設立のソフト・オン・デマンド(SOD)グループの女性向けAVメーカー。「シルク」レーベルの他、モザイクのない「COCOON」、より刺激的なラインの「UNDRESS」という3つのレーベルで展開。男性AVは通常、発売3か月で3000本売れればヒットとされるが、シルクラボの作品はロングセラーとなる傾向が多く1万本を売り上げた作品も。専属男優である一徹、月野帯人の人気も上昇、「エロメン」ブームをつくり上げた。http://www.silklabo.com
撮影/難波雄史
◆いかにして「女性向けのAV」ジャンルは確立されたか?
『女子の保健体育』 オトナ女子の自由研究 |
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