「長熟させる日本酒」――今、日本酒が面白い理由
【週刊SPA!連載】
★週刊チキーーダ!飯田泰之・萩上チキのヤバい研究報告書
今回のチキーーダ!は、飲んべえ・飯田が、麻布台の和食料理店「杉もと」を訪問。ブームとなっている日本酒の面白さ&味わい方を店主・杉本修一さんに聞いた後編です。⇒【前編】はコチラ
◆今、日本酒が面白い理由。― 福島の「食べるお米でできた酒」を飲みながら ―
杉本:会津錦(福島県)の新ブランド『Q[ku]』はボトルにもこだわっているんですが、最初、蔵元さんは瓶のコストを心配されていたんです。でも、僕は安く売る必要はない、こだわりましょうって。ここにしかない酒だからってゴリ押ししたんです。
飯田:日本酒は地酒と言いながら、全然違う地域から好適米を買ってきて造ります。水や気候などがその土地の味わいになるのでしょうが、『Q[ku]』は米から地のもの、まさに地酒だと。
杉本:1年目はМ310という水戸酵母を使ったのですが、今年の仕込みは福島酵母を使っていて、オール福島になるんです。
飯田:また来年、進化しますね。
杉本:だから、ラベルにビンテージを付けたんです。寝かせてもおいしいお酒だという確信があるので。仮に在庫が残ったとしても、あるときに放出すればいい。
飯田:いまだに「長熟させる日本酒」というイメージは薄いので、面白いですね。『Q[ku]』は、福島の風評被害米をなんとかしたいという始まりのストーリーも良くって、味が良く、しかも今度は完全な福島産になるというと三拍子揃います。
杉本:ただ、非常に本数が少ないんです。会津錦は専務さんが杜氏もしていて、若い蔵人さんと2人だけで造っているので。
飯田:実際口にすると、杉本さんの言う「今までなかったお酒」の意味がわかります。3種の中で、特に「純米大吟醸 袋吊り」は甘みのない甘酒みたい。
杉本:ワイングラスのような鼻の隠れるグラスで飲んでもらいたいんです。これは『Q[ku]』に限らないんですが、味わいのある酒は、香りもいいですから。
◆家呑みにオススメ純米酒
飯田:いろいろ日本酒を飲んできた杉本さんの家呑み銘柄って何ですか?
杉本:僕の中で鉄板の純米酒が2本あって、それは『神亀』(埼玉)と『天寿』(秋田)。『神亀』は辛口ながらしっかりした味で、『天寿』はバランスのいいお酒。味と値段はもちろん、常温保存できるのも家呑み向きなんです。
飯田:開栓した日本酒って、冷蔵庫を占拠しますからね。
杉本:『神亀』はスパイシーさもあるので、高カカオチョコレートと合うんですよ。
飯田:一方、お店でお酒を注文したいとき、好みの伝え方がわからない人もいると思うんです。
杉本:好きな銘柄をなんでも3種類ぐらいあげていただけると、こちらはオススメしやすいですね。加えて、今日は何杯ぐらい飲めるか。それがわかると、バランスよく組み立てていけますから。
飯田:なるほど。ただ、今日は3杯!と思ってても、絶対、3杯では終われないんですよ……。
【杉本修一氏】
麻布台にある「和食 杉もと」店主。都内のホテル(京懐石、ふぐ料理等)で修業を始め、赤坂の料亭、ホテル料理長などを経て2005年8月に独立。英語堪能な唎酒(ききざけ)師の資格を持つスタッフとともに、旬の素材を生かした料理と酒を提供する。
住:港区麻布台3-3-19
電:03-3586-1455(予約制)
営:日曜祝日定休
http://www.azabudai-sugimoto.com/
【飯田泰之】
’75年生まれ。エコノミスト。明治大学准教授。「2015年もあと残すところひと月少々! ラストスパートに向けて、酒量も加速度的に増加する予定」
【荻上チキ】
’81年生まれ。評論家。『シノドス』編集長。「先日、34歳になりました。もうさすがに“若手”と括られなくなるので、ほっとしています」
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