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いかにして「女性向けのAV」は確立されたか?

【週刊SPA!連載】
★週刊チキーーダ! 飯田泰之・荻上チキのヤバい研究報告書

◆いかにして「女性向けのAV」ジャンルは確立されたか?

荻上チキ(以下、チキ):早速ですが、シルク ラボ立ち上げのお話から伺えますか?

荻上チキ

荻上チキ

牧野江里(以下、牧野):自分はもともと、男性向けAVを作る仕事をしていたんですが、日々抱く仕事への疑問がスタートでした。映像内で行われているプレイに対して、「なんて、現実離れしてるんだろうな」って。

チキ:具体的にどんな点ですか?

牧野:潮吹き、かきまぜ系の手マンですね。女優さんから「痛い」「嫌だ」といったグチを聞いてましたし、自分の経験からも世のメンズはなんでこんなに「ガシガシ教」に洗脳されてるのか!?と。AVは男性の欲求を満たすためのものですが、このまま一方的なままだと世の中のためにはならないなぁと。

チキ:それがそもそものスタートだったんですね。

牧野:企画を出したら、当時の社長が「500万円やるから、やってみろ」って、任せてもらえたんです。ただ私自身、ADと宣伝の経験しかなかったので、どうしたらいいかわからず、社内の女性社員を集めて、就業時間後に打ち合わせをして進めていきました。女だけなので井戸端会議みたいになっちゃって、「遊びか?」みたいなことも言われましたけど、その無駄話が発見につながりました。

◆あくまでエッチな世界の入門編

チキ:宣伝はどうしたんですか?

牧野江里氏

牧野江里氏

牧野:運がよかったんです。タイミングよく、『an・an』SEX特集とコラボすることができたんです。向井理さんが表紙の号です。

チキ:みんな、買ってましたよね。ツイッターが普及しだしたのが2008年くらいですが、「向井理のあの『an・an』エロい」っていうのが初期のバズのひとつだったと記憶しています。(笑)。客層はどんな感じなんですか?

牧野:「こういうAVを観る女は寂しい女だ」と思うかもしれませんが普通です。ショッピングに行ってすれ違うような、どこにでもいる女性たち。イベントでそういう女性から「ありがとうございます」と言われ、改めて驚きました。

チキ:どこがもっとも、受け入れられたと思いますか?

牧野:おかずというよりは、日常のSEXで満たされない部分を埋めるのがうちの作品なんじゃないかなって思いますね。優しさとかいたわりとか、「よしよし」とか。精神的な部分が大きい気がします。

チキ:映像では自分に対する優しさは感じられないからなんとか現実で……ではなく、逆なんですね。

牧野:現実の人間に求めるより、手っ取り早い。生身の人間を変える努力より、自分でできるところで満たされれば精神衛生的にも関係的にもいいのかもしれません。

チキ:自己調達をすると。

牧野:「胸キュン補充をしてます」っていう意見がすごく多いです。女の人がヌケる作品をという気持ちもあったんですが、よくよく考えると、そういう人は普通のAVでいい。男性向けAVのジャンルは幅広いですから。そういった層よりも、AVは観れずモヤモヤしている人たちに球を投げたほうがいいなって。あくまでエッチな世界の入門編。シコれはしないけど濡れるみたいなレベルで留める感じですね。だから、男性がヌクためのものでもないんです。男性がうちの作品を観て、「こんなキスしねぇし、前戯も長くしないし、しゃべったりもしないし、つまらん!」って思ったら、その人はイケメンではない。

チキ:「お前のSEXは、実はつまらないんだ」ということですね。

牧野:「女の人がどうすると本当に喜ぶのか」を勉強するという意味では、使えるかもしれません。

⇒【後編】「女性向けのAVはどう消費されていくのか?」に続く http://nikkan-spa.jp/861504

【荻上チキ】
’81年生まれ。評論家。「6月間近でも花粉症が治まりませぬ。四季のうち本気出せるシーズンっていつだろう」

【牧野江里氏】
シルク ラボ社長。2006年にSODクリエイト入社。AD、宣伝広報の仕事を経て、「シルク ラボ」を立ち上げる。プロデューサーとして制作やイベント運営に携わるほか、自ら監督を務めることも。2013年に社長に就任。著書に『女子の保健体育』がある

●シルクラボ
2009年設立のソフト・オン・デマンド(SOD)グループの女性向けAVメーカー。「シルク」レーベルの他、モザイクのない「COCOON」、より刺激的なラインの「UNDRESS」という3つのレーベルで展開。男性AVは通常、発売3か月で3000本売れればヒットとされるが、シルクラボの作品はロングセラーとなる傾向が多く1万本を売り上げた作品も。専属男優である一徹、月野帯人の人気も上昇、「エロメン」ブームをつくり上げた。http://www.silklabo.com

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