ばくち打ち
番外編:カジノを巡る怪しき人々(3)
自分のわずかな体験だけで、世界を断ずる
この記事は、「カジノの専門研究者」を名乗る木曾崇(きそたかし)から、激しい攻撃を受けた。
その攻撃を読んでみると、日本で「カジノの専門研究者」を名乗る者が、いかにカジノ事業にかかわる基礎知識に欠けているのかを、哀しいながら納得せざるを得ない内容だった。
ちなみに木曾崇は、「国際カジノ研究所」を立ち上げ、そこの所長となっている(笑)。
カジノを巡る怪しき人々は、別に打ち手とジャンケット業界だけに居るのではない。利権が巨大なだけに、政治・行政・司法そして研究・メディアを含む、ありとあらゆる領域に存在する。
以下は、『日刊SPA!』でさかあがり記者が書いた「大王製紙・井川氏 マカオでヒルズ族とプレイしていた(前後編)」と題された記事に関する、「国際カジノ研究所長」で「日本で数少ないカジノの専門研究者」がおこなった批判だ。
すこし長くなるのだが、引用しよう。(「総括・大王製紙特別背任事件」)
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/6294067.html
(前略)この日本法人とは別に存在が報じられているのがジャンケット事業者と呼ばれる存在。ジャンケット事業者とは、上で紹介したカジノ事業者の現地法人の替わりにVIPの送客と新規顧客の開拓を行う外部事業者です。これら業務を肩代わりする見返りとして、自分が送客したVIPの「総ベット金額の○%」という契約でキックバックを貰います。詳細は過去に解説したことがあるのでこちらの記事を読んで頂ければと思いますが、今回の大王製紙の事件においてもカジノ事業者の日本法人とは別に、上記のようなジャンケット事業者の存在も確認されているようです。
また、ここに関しては一部で間違った情報も流布されているので、一応繰り返し強調しておきますがジャンケット事業者への報酬はあくまで送客したVIPの「総ベット金額」(ゲームに賭けた金額)をベースとして支払われるもの。そのゲームで顧客が「勝つor負ける」事は、ジャンケット事業者の報酬には全く影響がありません。下記のリンク先では「客が負けてくれればくれるほど、ジャンケット事業者としては実入りが大きくなる」ので、「負けた人にはどんどん金を貸す」などというコメントをしている人が居ますが、これは完全に間違いです。
大王製紙・井川氏 マカオでヒルズ族とプレイしていた【後編】 「負けた人にはどんどんカネを貸して打たせる」
https://nikkan-spa.jp/83041
[…]ジャンケット業者には『負けた人にはどんどんカネを貸して打たせる』という特徴がある。なぜならジャンケット業者は、客が勝った金額も負けた金額もハウスと折半する決まりとなっているから。客が負けてくれればくれるほど、ジャンケット業者としては実入りが大きくなる[…]
森巣さんは確かにカジノプレイヤーとしては有名な方ですが、あくまでお客様として有名な方でありカジノの専門家ではありません。私が井川氏に対する個別のコメントを控えているのと同様に「よく知らない事」に対して適当にコメントするのは控えましょう。間違った、もしくは憶測の情報が世に広まる事は、けして全体にとって良い結果を生みません。(以下略)
わたしは思わず食べていた物を吹き出してしまった。
おそらくこの「国際カジノ研究所長」で「日本で数少ないカジノの専門研究者」は、マカオに行ったことがないのだろう、と邪推した。すくなくとも、マカオの大手ハウスのプレミアム/ジャンケット・フロアに入れてもらったことはあるまい。
自分の数年間だけのわずかなラスヴェガス体験の知識だけで、マカオという「ラスヴェガスの3倍」の市場規模を持つカジノ事業を判断している。
まあ「国際(笑)カジノ研究所長」だから、そう法螺を吹くしか仕方ない、という事情はあったのでしょうが。
これはカジノ産業の領域のみのことではないけれど、事情を知らない人ほど、「妄想」への思い込みが強くなる。
そもそも現在のラスヴェガス大手ハウスに、「ジャンケット業者」はほとんど入っていない。
なぜか?
「ディスカウント」制度があるからである。
それゆえ、「ジャンケット業者」は次第に死に絶え、その代わり、と言ってはおそらく語弊があるのだろうが、「エージェント」に取って代わられた。