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北海道と秋田県、かつての学力テスト下位県の40年後の明暗
2016年09月02日
北海道と秋田県、かつての学力テスト下位県の40年後の明暗
砂澤陣
秋田県もかつては全国学力テスト最下位だった?
<文/砂澤陣> 今では当たり前のように行われている小中学生を対象にした全国学力テストだが、私の住んでいる北海道は下位の常連になってしまっている。2015年度は、北海道は小学校で最下位だった。ちなみに1位は例年通り、この年も秋田県だった。
平成27年度 全国学力・学習状況調査 報告書
秋田県には意外な過去がある。1960年代、秋田県は全国学力テストで40位台を低迷していた。「これでは県外にいる県出身者は、胸を張って故郷を語れない。このような状況を何とかしなくては」、と県教育関係者たちは誓った。それから教育改革のための努力が始まったという。 一方の北海道も、1960年代の学力テストでは、秋田県などと最下位競争をしていた。だが、2007年に復活した全国学力テストで、秋田県がいきなり「学力日本一」に躍り出て、日本中を驚かせた一方で、北海道は相も変わらず最下位を争っている。 ところで、全国学力テストは、実は1966年に中止されて、以来、2007年に再開されるまで、40年間も中断されていたことをご存じだろうか。 なぜか? それは、北海道を舞台に繰り広げられたある裁判闘争の影響だった。「旭川学力テスト事件」である。
旭川学力テスト事件
この事件は、1961年に旭川市立永山中学校で起こった。文部省(当時)は1956年から小・中・高等学校の児童生徒を対象に、抽出して学カテストを行っていたが、1961年は全員が試験を受ける悉皆(しっかい)方式で実施した。 しかし北教組は、学力テストは「中央集権的諸立法ならびに教育行政施策の締めくくりを図らんとするものであり、憲法ならびに教育基本法に違反する教育に対する国家権力の重大なる介入である」、「一片のペーパーテストの結果によって児童、生徒の将来を決定することは、当該児童、生徒に対する重大なる人権侵害である」と中学全国一斉学力テストに猛反対した。 旭川地方労働組合会議などと共闘体制を確立した彼らは、なんと学力テストの違法性と不当性を訴え、中止を要求するために、テスト中の永山中学校に日教組シンパの保護者を伴って侵入し、校長に暴行したのである。 建造物侵入と公務執行妨害事件で起訴された被告らには、北教組の組合員の他に、国策パルプ労働組合旭川支部副支部長、国鉄労働組合旭川地方本部執行委員、北王製油労働組合などに所属していた者たちが共犯として挙げられた。
裁判闘争の果てに
北教組は、学力テストはそもそも違法なのだから、それを暴力で阻止した教員や保護者は無罪だというとんでもない言い分を主張した。 しかも、なんと裁判所はその主張を支持。一、二審とも学力テストが「不当な支配」にあたり違法と判断したのである。さすがに最高裁大法廷は、学力テストは適法とし、被告となった北教組の組合員らは、懲役3ヶ月などの判決をそれぞれ下された。 この公務執行妨害裁判は、北教組の徹底抗戦により、決着までに15年という長期裁判となった。学力テストが1966年に中止されて以来、2007年に再開されるまで40年もの間、行なわれなかったのは、この裁判の影響である。 このような裁判闘争に傾注した北教組に牛耳られて、児童生徒の学力問題に正面から向き合ってこなかった北海道の教育界と、郷土のために教育改革を行ってきた秋田県の差が、40年後にテストの点数に表れたのは必然であると言えよう。
【砂澤陣(すなざわ・じん)】
昭和38(1963)年生まれ。彫刻家砂澤ビッキの長男。ビッキ文様を継承するとともに、ビッキ作品の修復・保全活動、さらに自らも木工製品の制作を手がける他、注染で仕上げる「日本手拭い」の図案も手がけている。ブログ「後進民族アイヌ」でアイヌの自立を訴え、アイヌ利権とアイヌ史研究の偏向性の問題を告発し続けている。最新刊は
『北海道が危ない!』
(育鵬社)。
砂澤陣
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