空港がもたらす地域イノベーション:「虚構」の空港バッシング2

静岡・茨城の両空港はまったく「ムダ」ではなかった

 こうした現実を目の当たりにすれば、公共事業バッシングの風潮が吹き荒れた時にさんざん言われた「ムダ」だの「血税タレ流し」だのという話は、単なる罵詈雑言に過ぎなかったと言える。  つまり「ワルい政治家と役人が癒着してムダな空港を作っている」という構図を作り上げた、かつてのビジネス誌や写真週刊誌の批判の利用搭乗者数の推移だ。  それを見ると、一定程度の変動は見られるものの、開業当初からみれば利用者は増加傾向にある。そして、2015年には県が設置した行政目標をおおむね達成している。  2018年現在では国内線、国際線、計11路線が就航しており、「誰も乗らない使わない」とか「ムダだ」とは到底言えない状況にある。  茨城空港についても、利用者は大きく増加し続けている。開業当初こそ20万人程度の利用者だったが、2016年時点ではその実に3倍の60万人以上に達している。  就航している路線数も、開業当初には国際線、国内線合わせて3路線だけだったが、2018年現在は計7路線。便数も約3倍へと飛躍的に増加している。  ちなみに、茨城空港でこうして就航もまた、単なる「えん罪」「濡れ衣」に過ぎなかったのである。  ちなみに、記事ではそんな「濡れ衣」を着せた挙げ句に、最後に空港整備それ自体を「葬り去らなければならない」とまで宣のたまっていたわけだが、そんな誹 謗中傷でホントに葬り去られていたとすれば、今、年間60万人以上のこれらの空港を使った旅行やビジネス移動がすべてなかったことになるわけで、彼らは皆、大なり小なりの「損害」を被っていたことになる。  そう考えれば、理不尽な公共事業バッシングを繰り返したマスコミの「罪」は甚大だと言わざるを得ない。

茨城・静岡空港の「社会的な意義」とは何か?

 では茨城や静岡の空港は、一体どういう形で具体的に社会に役立っているのかを、改めて確認してみることにしよう。  まず、年間60万人以上の利用者がいるということは、もうそれだけで、それぞれの空港が60万人の人々の移動に役立っていることを意味している。  彼らは皆、それら空港を使うことの方がそうしないことよりも得策だったからそうしているわけで、なければその分だけ不利益を被っていたわけだ。  実際、茨城空港について言うなら、一部メディアでは茨城空港の実績を踏まえて「北関東地域における空の玄関」と指摘されてもいる(東洋経済オンライン、2014.1.25)。  つまり多くの北関東の人々は、茨城空港によって自分たちにとって便利な「玄関」を得たわけで、そのこと自体が大きな社会的意義だと言えよう。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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