空港がもたらす地域イノベーション:「虚構」の空港バッシング3
茨城・静岡空港の「社会的な意義」とは何か?
次に、それだけ多くの人々が利用しているのだから当然、大量の「キャッシュ」を、その空港で落としている、という点に着目してみよう。 言うまでもなく、これが茨城県や静岡県の当該地域に巨大な経済効果をもたらしている。その一部が先に紹介した茨城・静岡両空港の「営業黒字」だが、これはそれら空港がもたらしている巨大な経済効果の「ごく一部」に過ぎない。 そもそも、黒字であってもその利益を被っているのは空港を運営する「一法人」に過ぎず、そして空港という公共的存在は、運営法人のカネ儲けのためだけに存在しているのでは断じてない。 第一に利用者に便利な航空運輸サービスを提供するために存在している。 第二にそのサービスを提供するさまざまな法人、例えば、運営会社はもちろんのこと、エアラインを運営する飛行機会社、空港ビル内のレストランや商店、空港アクセスのバスやタクシー等の多種多様な企業のビジネスのために存在している。 第三にそんなさまざまな法人で働く人々の雇用を生み出すために、そして第四にそれらさまざまな影響を通して茨城・静岡県や東日本(さらには日本全体)の活性化のために存在しているのである。 つまり、空港に訪れる人々が落としていく「キャッシュ」が、さまざまな関係企業を潤し、そこで働く人々の暮らしを支える所得をもたらし、それら全体を通して地域経済全体を潤しているのである。 そしてそんなキャッシュを落としていった人々は、そのキャッシュ支払いの見返りとして、便利な航空輸送サービスを手に入れ、地域の空の玄関口を手に入れているわけだ。 だからもしも茨城や静岡の空港がなければ、これだけの経済効果も、利便性向上効果もこの世に存在していなかったのである。これこそ、こうした空港の「社会的意義」の内実だ。 こうした視点で考えるなら、空港の運営会社が赤字か黒字かという話は極めて些細なことなのであり、その社会的意義を考えるにあたって、ほとんど関係のない話だ。 それよりも大切なのは、その空港という存在それ自体が「公益」にどれだけ寄与しているのかという視点だ。 仮に運営法人が黒字でも、トータルな視点から言って社会に不利益をもたらしているのなら、そんな空港はない方がいいのである。 その逆に仮に運営法人が赤字でも社会に大きな利益をもたらしているのなら、その空港は是非とも存続させなければならないのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。ハッシュタグ
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