空港がもたらす地域イノベーション:「虚構」の空港バッシング4

茨城空港がなければあり得なかった「空のえき そ・ら・ら」

 この「空港の社会的意義」なるものを、さらに具体的に掘り下げてみよう。  茨城空港は、茨城県の小美玉市という自治体に作られた。小美玉市は空港さえなければ、よそから多くの人々が訪れるようなことなどあり得ない、農業などを生なり業わいにする地域の人々が暮らす茨城の小さな自治体だ。  その地がこの茨城空港ができたことで、北関東の人々が出かける際に使うにあたって大量に訪れると同時に、中国や台湾、韓国などのアジアの国々を中心とした多くの人々が大量に訪れる土地となったわけだ。  つまり、小美玉市は何の変哲もない北関東の小さな一自治体から「北関東の玄関口」へと生まれ変わったわけだ。 これはすなわち、適切に戦略的に作られた空港は、「その土地の意味」を根底から変換させる大きな「地域イノベーション」をもたらす大きな力を持っていることを意味している。  そんな空港による地域イノベーションの小さな象徴が、茨城空港の近くに平成26年にオープンした「空のえき そ・ら・ら」という、レストランや商店、多目的施設等を含む「地域活性化」のための総合施設だ。  東京や大阪などの大都市の商業施設に比べれば、その規模は小さいが、小美玉市にしてみれば、これまでほとんど訪れることのなかった地方からの来訪者たちが「キャッシュ」を落としていく受け皿となる貴重な施設だ。  そしてこの施設を運営するためにはもちろん働く人が必要なのだから、この施設もまた「雇用」を生み出している。 つまり、よその地域の人々が落としていくオカネが、この施設を通してこの地域の人々の「仕事」を新たに生み出し、「所得」をもたらしていることを意味している。  さらにはこの施設では、地域の農産品や特産品が販売されているわけだから、この施設はその施設で働く人々に対してだけでなく、地域の農業をはじめとした地域産業で働く人々に対しても間接的に「潤い」を与えているわけである。  言うまでもなく、そこに茨城空港が作られなければ、そんな施設がこの地に作られることなど絶対になかった。  だから茨城空港の整備プロジェクトは、地域を活性化する「地域装置」である「空のえき」を生み出し、それを通して新たな「雇用」を生み出し、所得という「潤い」を地域の人々に与えるに至っているのである。  さらに言うなら、こうして増えた「所得」は巡り巡って地域経済全体の底上げに寄与すると同時に、小美玉市や茨城県、そして日本政府に対して所得税や法人税、消費税などの「税収増」という恩恵をもたらしている。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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