スポーツジム内の格差について思うこと【コラムニスト原田まりる】

 正月太りを解消すべく、スポーツジム通いを再開する人も多いのではないだろうか? 私もジムに通っていると思うことなのだが、漫画に出てきそうな大きなダンベルがここぞとばかりに並べられているフリーウエイトコーナーには、なぜこうも立ち寄りがたいのかと――。

 ランニングマシンや筋トレマシンは手軽に行うことができるのに、フリーウエイトコーナーだけは、いつも異常な雰囲気を放っている。

 スポーツ経験上級者なら臆することなくそのエリアに足を踏み入れることができるのであろうが、入会したての初心者にとっては“最後の砦”感がある。

フリーウエイトエリアは戦場だ


 私は一人で行うスポーツが好きで、アルペンスキー、カート、ボクシングと一人で出来るスポーツをやってきた。これらのどの競技も、筋トレが必要なのでスポーツジムも多岐にわたり入会した。地域密着型のスポーツジムから、トータルワークアウト、ゴールドジム、ボクシングジムとさまざまなタイプのジムを渡り歩いたのだが、驚くことにどのジムでもフリーウエイトコーナーだけは異常な緊迫感を醸し出していた。なぜかというとフリーウエイトエリアにいる人たちに偏りが見られるからである。スポーツジムでは訪れる人々は5つの人種にわかれている。

(1)運動不足のサラリーマン
(2)自分磨きOL
(3)暇を持て余す主婦
(4)脂肪が全然ないおじいさんおばあさん
(5)筋肉マニア


 この5種がほとんどを占めている。もちろんフリーウエイトコーナーには(5)が主に生息している。そしてこの中でも見えない関係性があり、(5)がサーキットトレーニング(いくつかのマシンを何セットかやるトレーニング)をしている間はそのマシンに近寄り難い。

 また、(5)は限界値を突破しようとする時「う゛あ゛あ゛あ゛っ」という濁音混じりの声を上げるため、威嚇でなくともその声に初心者や(2)はビビってしまう。(1)は(5)のストイックな姿に憧れをもつが恥ずかしくて「ぬあぁっ」という消極的な声に落ち着く。(3)はスタジオレッスンに忙しく、(4)は長時間入り浸るのが日常なのであまり周囲を気にせず黙々とトレーニングに励むことが多い。

 そして、上記のどのタイプかによってトレーニングウェアも違ってくる。

(1)がナイキやアディダスなど定番ブランドウェア
(2)が目立たない色のTシャツ
(3)がカラフルなウェア
(4)がシンプルな白T
(5)がアンダーアーマーのウェア、もしくはCW-Xのウェア


 という個性がある。(5)はたいがいCW-Xの筋肉疲労を軽減させる真っ黒のスパッツを履いており、普段スポーツに馴染みのない人からみると「あのスパッツなんだ?」と不思議に思うものである。

 そしてフリーウエイトコーナーはこの(5)筋肉マニアの巣窟である。ギャグのような大きいダンベルを持ち上げたり、まるで筋肉に語りかけるかのように上腕二頭筋を凝視しながら黙々とダンベルを上げ下げする猛者たちがスポーツジムの隅の一角に集結しているのだから異様な光景である。

 しかし初心者には入りづらいフリーウエイトエリアだが、勇気をだしていざ入ってみると意外にも殺伐した様子はなく、それどころか「安心感」に溢れている。どういうことかというと、スポーツ経験ヒエラルキーのようなものかもしれないがフリーウエイトコーナーで一人でトレーニングしていると「ああ、お前ダンベルの使い方をわかってるクチね、こっち側ね」という暖かい仲間意識のような視線が注がれるのだ。

足を踏み入れると、意外と居心地がいい?


 これは男女限らず筋肉マニアあるあるで、トレーニング・筋肉知識があるもの同士の認め合いのような絆が発生しているのだ。ボディーメイクが趣味の筋肉マニアや、ビルダーはいわゆるアニメやゲーム好きのオタクと似ているところがあり、共通の趣味をもち、お互いの知識を認め合うことにより心を開くという傾向にある。なので筋肉マニアに「ムサシのBCAA飲んでいる」というちょっと込み入った話題を振ると皆、園児のように目をキラキラと輝かし心を開いてくれるのだ。

 スポーツジムではパッと見だけでは、その人のスポーツ経歴はわからない。なのでフリーウエイトコーナーでなんなくトレーニング出来るか否かが一つの見極めポイントの目安のような働きをしている。フリーウエイトコーナーが異常な雰囲気を醸し出しているのは、筋肉マニアたちによる見えない仲間意識が結界のように見えるだけであって、入ってみたものにしかわからない安心感・居心地のよさがそこにはある。フリーウエイトエリアはスポーツジム内のパワースポットである。 <文/原田まりる>

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【プロフィール】
85年生まれ。京都市出身。コラムニスト。哲学ナビゲーター。高校時代より哲学書からさまざまな学びを得てきた。著書は、『私の体を鞭打つ言葉』(サンマーク出版)。レースクイーン、男装ユニット「風男塾」のメンバーを経て執筆業に至る。哲学、漫画、性格類型論(エニアグラム)についての執筆・講演を行う。Twitterは@HaraDA_MariRU
原田まりる オフィシャルサイト https://haradamariru.amebaownd.com/

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