更新日:2014年11月20日 21:02
ニュース

停電頻発!日本より深刻な「中国の電力事情」

福島第一原発に続く浜岡原発での全機運転停止により、夏場の電力不足を危惧する日本。しかし、あまり知られていないが中国でも全国的に電力不足が深刻化し、無計画停電が頻発しているのだ。 『新華網』(5月19日付)によると、この夏、中国では7年ぶりに大規模な電力不足になることが見込まれているという。そして、電力不足による混乱は、夏を前にすでに始まっている。『羊城晩報』(5月9日付)によると、広東省清遠市で何の前触れもなく“無計画停電”が起こり、観賞魚の養殖場の錦鯉1万匹以上が水温上昇により死亡。被害額は6000万円相当に上ったという。ちなみに停電実施の責任者である地方政府は、ビタ一文、賠償するつもりはないというからいかにも中国らしい。  さらに『海峡都市報』(2月26日付)によると、福建省福州市の中心部で停電が発生した際、同地区の病院の電力も失われた。そのとき行われていた、白内障患者の手術が中断され、患者が失明する医療事故に繫がった。  広州市の日系工場に勤務する長田幸弘さん(仮名・30歳)の話では、停電により、ほかのライフラインも寸断されてしまうこともしばしばだという。 「停電になると、なぜか上水道も機能しなくなり、断水が起きることがある。すると工員寮では、水の流れなくなった共同トイレに大便を重ね重ねにするしかない。中国の下水道はトイレットペーパーを流せないほど細いため、すぐに詰まるんですが、停電が回復して水が流れるようになると、今度は悪臭のする水が溢れだす。しかも、ウチの寮は手抜き工事で傾斜しているので、傾斜の下にある部屋にその水がすべて流れ込んでしまい……地獄の光景ですよ」  一方、広東省仏山市で貿易業を営む林田岳男さん(仮名・47歳)は、無計画停電のなか、逞しく生きる人民たちの姿を目撃した。 「夜、路地裏の食堂で食事中にいきなり停電になった。何も見えなくなったが周囲の人は慌てる様子もなく暗闇のなか、食事を続けていました。そのうち、誰かが道路一本隔てた停電していない区画の電柱によじ登り、そこから配線を引いて戻ってきた。すると間もなく停電が回復。よく考えたらあれは盗電ですよね……」  中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏は、電力不足と頻発する停電についてこう解説する。 「中国では国土の広さから、それぞれの省が管轄する電力会社が全世帯をカバーしきれず、農村部などでは私営の闇発電所が暗躍してきた。ところが、電力需給の統制を図りたい政府により、それらの多くは08年頃までに潰されてしまった。しかし、電力需要は右肩上がりとなる一方。闇発電所が担ってきた供給量をカバーする電力を正規発電所は作れず、さらに全発電量の7割近くを占める石炭の不足も響いている。節電は全土的な課題なのに、日本のように節電を呼びかけても言うことを聞かない。そこで、当局は強制停電を実施しているのです。特に強制停電が増えてくる夏に向け、中国に生産拠点のある日本企業にとっても悪影響が出てくる可能性がある」  国内のみならず中国の電力不足にまで脅かされるとは、日本経済にとってはなんとも頭の痛い夏になりそうだ……。 取材・文/奥窪優木 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい―驚愕情報を現地から即出し SPA!獨家報導 vol.154 7年ぶり大電力不足編
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた
中華バカ事件簿

激動の現代中国社会をイッキに覗き見!中国実話120選

おすすめ記事
ハッシュタグ