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「日本のトマトは年間1万トン捨てられています」トマト農家が語る“価格高騰”の背景。廃棄ゼロを目指す取り組みも

近年の物価高や気象変動のあおりを受け、高騰を続ける野菜。スーパーなどで野菜のあまりの高さにおののき、買い控える瞬間も多いのではないだろうか? 中でも、昨年の猛暑の影響で限界突破の高値となった野菜のひとつが、トマトだ。そうした厳しい条件下で、日本一のトマトの産地からトマトの廃棄ゼロを目指す男性がいる。

日本のトマトは年間1万トン以上廃棄されている

トマト男氏

トマト男氏

昨年秋、トマトの価格が平年比2倍の高値となって久しい。2025年2月現在、真冬だからかもしれないが、ネットスーパー「Amazonフレッシュ」で検索すると、トマト1玉287円、4個で556〜816円と相変わらず高い。  日本のトマトの出荷量は年間60万トン以上(※1)。その内、「熟しすぎ、割れがあることで規格外となるトマトはおよそ全体の2%」と語るのは、日本一のトマトの産地、熊本・八代市で農家を営みながら、トマトの廃棄ゼロ活動をするトマト男氏。 その計算でいくと、流通からはじかれ、日本で捨てられるトマトはおよそ1.2万トンで、25mプールに換算すると33個分にものぼる。八代市だけでも、そのうちの大体10分の1にあたる、年間1000トン以上トマトが捨てられているというから驚きだ。  実情を知るべく、トマト男氏を直撃した。 ※農林水産省 令和5年産・作物調査(野菜)調査より 

トマトの値段は高騰するが…減らない廃棄トマト

廃棄されるトマト

人里離れた畑に廃棄されるトマト

──今、なぜこんなにトマトが高いんですか? トマト男:とくに昨年の猛暑の影響が大きいです。15年間トマト栽培をしてきましたが、夏から秋が訪れず、いきなり冬になるような激しい気候変動に、トマトも適応できなかったんです。農家としても、2週間後の気象予測が立たず、温度や日照管理がとても難しいのです。 それと八代市では農機具を動かすための重油代も2倍に跳ね上がっているほか、輸入品の肥料や農薬代も物価高の影響で高くなり、大きな負担になっています。 ──気候変動の影響でトマトが不作なのにもかかわらず、一方で食べられるトマトが規格外というだけで大量に捨てられるなんてもったいないですよね? トマト男:そもそも実家も農家で、出荷組合を営んでいるので、規格外トマトは毎日当たり前のように捨てられるのは知っていました。 もちろん食べ物を捨てる後ろめたさはあるので、トマトを捨てるための畑は人里離れた場所が多く、人目に触れない時間に作業することが多いですね。 出荷組合としても、せっかく農家さんから集めたトマトを、規格外とはいえ大量に捨てるところは大っぴらに見せるのはよろしくないですから…。
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当たり前だった“廃棄トマト”に違和感を感じたワケ
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EDIT for FUTURE代表取締役。編集者、ライター、編集コンサルタントとして多くのメディアで編集長やライティング、記事制作を手がける。おもなジャンルはビジネス、ライフスタイル系。趣味は散歩とギターと山登り。

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