男性用オナホール先進国ニッポン 【荻上チキ×松本光一(株)典雅社長】 Vol.2

 8年前、『TENGA』をこの世に送り出し、日陰の行為とされてきた自慰行為に光を当てた株式会社典雅。社長・松本光一氏のものづくりに対する熱い思いは、荻上チキ著『セックスメディア30年史欲望の革命児たち』(ちくま新書)に詳しいが、なんとこのたび、TENGAから新たな商品が発売されるという。同社からは、今年3月に女性向けの『iroha』が生まれたばかり。

 挑戦を続ける松本社長に、荻上が1年ぶりに再会。昨年、局所的に話題となった台湾のアダルトグッズへの寸評から新製品『VI-BO』の開発秘話まで、2人が熱く語り合った!

⇒「Vol.1 “遠隔セックス”という妄想と実現度」はコチラ
http://nikkan-spa.jp/510020


◆Vol.2 男性用オナホール先進国ニッポン

※前回、台湾メーカーが開発したアダルトグッズ『LOVE PALZ』について熱く語り合った2人。今回は日本のオナホールについて考察する

荻上:こう話していくと、「こうして欲しかった!」っていう夢が広がるんですよ。だから、ダメなものでも、ちゃんと第一歩があるのは大事なことなんですよね。反面教師にできる、ベンチマークになっていきますから。

典雅社長,松本光一氏,荻上チキ松本:そうなんです。チャレンジングなことはすごく認めていて、挑戦してくれたことでうれしいとは思います。ただ、やっぱり、男性の思い込みが強いんですよね。『LOVE PALZ』は、遠隔でのセックス、コミュニケーションとして考えるならば、商品コンセプトとしてこれまでのアダルトグッズであってはいけなかったんです。女性が楽しんでもらい、男性も楽しめるものでなければいけない。僕はどうしてもプロダクト目線になってしまうのですが、思いやりとか、ある種の女性に対するマーケティングが盛り込まれていない。これはやっぱり男性のものなんですよ。もし、うちがやるならば、「女性は遠く離れていて、何がうれしいか」ということから入っていきたいと思います。あくまで女性に対して、女性がひいてしまう、こんなことするの?って壁ができてしまったら、実現していかないとは思いますね。

荻上:まだまだ業界としては、発展途上ということでしょうか。ただ、3年前、秋葉原のエムズさんに取材に行ったとき、「TENGAの登場によって他のプロダクトも刺激を受けた。TENGAの模倣品が作られたんだけれど、結局、模倣路線はダメだったということがわかり、次に模倣路線とは違う方向で広がりを見せた」という話を伺いました。例えば、萌え系など、コンセプト系オナホが多くでてきましたよね。

松本:萌え系は進歩したのがわかりますね。ちゃんとマーケティングをしていますよ。

荻上:パッケージだけでなく、いろいろな工夫が出てきましたね。競争が選択肢を増やしてきたというか。

松本:簡単に言うと、ちゃんとコストをかけていますよね。パッケージも、どういう表現をしたらウケるのか、ユーザーの心を刺激するにはどうするかというのがちゃんと考えられるようになってきた。アダルトグッズもちゃんとした品質でないとお客さんが納得してくれませんよ、ということに、気づいたんでしょうね。やっぱり、世界的に見ても、日本の男性用オナホールは進んでいますよ。アメリカ行っても、ヨーロッパ行っても日本ほど数がある国はないし、新しいものがこれだけ代謝よく生まれている国もありません。ただ、海外はがっかりする店も結構あるんですよね。女性器そのもの、おっぱいそのものといったものが、大きい箱に入っていたり。お尻のでっかいのがあったり。ホールも小型ではあるけど、完全に女性器を模したものであったり。日本みたいに、なんだかおもしろいなっていう感じのノリはないですね。極めて、エロく、人体の再現に近い。

荻上:それらがいっぱい家にあったら、イメージはホラーですね(笑)。

松本:それに対して日本のオナホールって、今言ったアニメ路線があったり、リアル路線があったり、うちみたいな、アニメでも女性器の再現でもないっていう路線があったりと。バリエーション的にも多いし、男性用ってやっぱり日本は発達していると思いますね。一方で、女性用のバイブは、圧倒的にヨーロッパが進んでいる。ヨーロッパでは、そのブランディングはあくまで女性に対してですし、素材なども、女性が納得するような品質になっている。日本のバイブはやっぱり、男性がコンタクトポイントなんですよね。男性が女性に対して、「これを使ってみたい」というノリですよね。それに対して、ヨーロッパにあるバイブは女性が好印象を持つパッケージや形であって、決して男性器そのものの形ではない。たまがぐりぐり動いたりとかいうものでもない。お店に入れば、女性客のほうがむしろ多かったりして、女性店員が女性に対して、これがいいですよ、ってコミュニケーションをとっている。日本のアダルトグッズを扱っている店で、女性のほうが多いって、僕は見たことがないですからね。女性が介入してこなかった現状があって、ここで思いっきり文化が分かれているんです。

●株式会社 典雅 http://www.tenga.co.jp/
●iroha http://iroha-tenga.com/

【松本光一】
1967年、静岡県出身。自動車整備の専門学校を卒業後、スーパーカーやクラシックカーの整備に携わる。その後、中古車販売会社に勤めるも、モノづくりへの思いが日々強まり、34歳で脱サラ。当時、粗悪なのが当たり前、マーケティングどころかメーカーの連絡先明記すらないアダルトグッズを変えようと、それまでに貯めた軍資金1000万円を元手に、自主制作を始める。「アダルトグッズに一般性を」と取り組むこと3年、試行錯誤の末、軍資金も底をつき始めた2005年3月に有限会社典雅を立ち上げる。同年7月7日、モノづくりの魂を込めた「TENGA」5種類を同時発売。発売から1年で、シリーズ累計出荷数は100万本を突破する大ヒットとなる。

【荻上チキ】
1981年生まれ。評論家・編集者。メールマガジン『αSYNODOS』、『困ってるズ』、ニュースサイト「Synodos」編集長。政治経済から社会問題まで幅広いジャンルで取材・評論活動を行う。週刊SPA!にてエコノミスト・飯田泰之とともに「週刊チキーーダ!」を連載中。最新刊は、飯田泰之との共著、『夜の経済学』(扶桑社)。他、著書に『彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力』(扶桑社)『検証 東日本大震災の流言・デマ』(光文社新書)『セックスメディア30年史』(ちくま新書)『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』(幻冬舎新書)など。出演番組にTBSラジオ「session-22」、CS朝日ニュースター「ニュースの深層」ほか。

<撮影/落合星文 構成/鈴木靖子>

セックスメディア30年史欲望の革命児たち

風俗、出会い系、大人のオモチャ。日本には多様なセックスが溢れている。80年代から10年代までの性産業の実態に迫り、現代日本の性と快楽の正体を解き明かす!

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