音楽ストリーミング配信が日本で広がらない理由
「ストリーミング音楽配信サービス」。日本では聞き慣れないサービスだが、世界では今、CDを超える利益を出しつつある。
◆音楽ストリーミング配信はなぜ日本で広がらない!?
縮小する一方の音楽業界を救うかもしれないといわれるサービスがある。この秋、日本上陸が囁かれている『スポティファイ』だ。
今、海外では音楽をストリーミング配信する『スポティファイ』や『ディーザー』のようなサービスが市場を席巻し、CDに取って代わりつつある。ストリーミング音楽配信サービスとは、従来とは違いダウンロードではなく、サーバーにストックされた曲をストリーミングで再生できる仕組み。基本定額制だが、無料で使える範囲が広く、合法的にネットで音楽を聴取できるのだ。
だが、海外では広がっていても、日本での知名度はイマイチ。それはなぜなのだろうか?
◆ストリーミングサービス世界での失敗の歴史
音楽業界に詳しいコンサルタントの榎本幹朗氏は、日本の問題点をこう指摘する。
「日本には実はすでにストリーミング音楽配信サービスがいくつかあります。ですが、一般にはほとんど知られていない。というのも、今の日本は10年以上前のアメリカの失敗をそのまま繰り返しているところがあります」
時は’00年まで遡る。当時アメリカでは『ナップスター』というファイル共有ソフトの登場で違法アップロードされたファイルが蔓延し、CDビジネスが壊滅状態に陥っていた。
音楽業界は違法アップロードファイル対策として、定額制ストリーミングを生み出したのだ。
「このとき登場したのが、『ラプソディ』、『プレスプレイ』、『ミュージックネット』の3つ。でも、まるで流行らずiTunesの時代になりました。理由の一つはmp3に比べ使い勝手が悪い。もう一つは“聴き放題”を謳っているのにもかかわらず少ない邦楽の曲数。特にユーザーが最も聴きたいはずの新譜が揃ってなかった。まだCDを売りたいレコード会社が新譜を提供するのを渋っていたんですね。今、日本にあるストリーミング音楽配信サービスもこの2つに当てはまります。さらに当時は、ストリーミング配信に対応した携帯がなく、パソコンの前でしか聴けなかったのもネックでした」
しかし、スマホが普及し始めたことで状況は一変、欧州を皮切りにストリーミング配信サービスが急速に伸び始めたのだ。’06年に創業し、’08年秋にサービスを開始した『スポティファイ』は欧州で800万人のユーザーを獲得するに至り、’11年にはアメリカ進出も果たす。
「毎月20時間までは無料で使い放題、新譜も聴ける、というのがほかのストリーミングサービスとの決定的な違いでした。しかも、スマホでも聴けて、インターフェースは徹底的に使いやすく、検索してクリックすればすぐに聴ける。違法ファイルをダウンロードするよりも圧倒的に手間がいらない、という利点がウケたのです」
⇒【次回】『音楽ストリーミング配信大手の日本上陸が難航!?』へ続く https://nikkan-spa.jp/513539
【榎本幹朗氏】
音楽ライター、コンサルタント。ビートリップ、ぴあを経て独立。音楽業界の新規事業開発やコンサルティングを中心に活動中
取材・文/朝井麻由美
― ストリーミング音楽配信サービスは音楽業界を変えるのか?【1】 ―
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