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今さら聞けない「定額制音楽配信サービス」ってどうなってるの?

この春、大手サービスが相次いで登場した背景は? 結局、どのサービスを選べばいいのか? 今さら人に聞けない素朴な疑問を一挙解決! ◆今、デジタル音楽業界では何が起きているのか……? 定額制音楽配信サービス 去る7月1日、定額制音楽配信サービス「アップルミュージック」がスタートした。「月額1000円前後で100万曲単位の音楽が聞き放題」という同種のサービスでは、すでに先月「LINEミュージック」と「AWA」が相次いでスタートしており、ブームの兆しを感じさせる。 「いまや音楽は“所有する”という概念から“アクセスする”という概念に変わりつつあります。これは“CDが売れなくなる”という現象とパラレルで、CDを所有することによって物理的なスペースも取られるし、よほど好きな曲でない限りは何回も聴くことはない。それなら、軽い感じでストリーミングで聴くほうがいいだろう……となるのは、必然的な流れだったと言えます」と解説するのは、音楽評論家の小野島大氏。  実は定額制音楽配信サービス自体は’00 年代半ばにすでに登場しており、日本でも「ナップスター」が’06 年にサービスを開始している。 「ただ、ナップスターの場合はストリーミングではなく、音源をいちいちローカルにダウンロードしなくてはならず、“所有”の概念を払拭しきれなかった部分があります。サービスをやめるとデータにロックがかかって聴けなくなる仕組みなのですが、データ自体は手元にある分、理不尽な気持ちに……。定額制音楽配信は、クラウドに置いてある音源をストリーミングで聴くというスタイルで初めてよさを発揮するものであり、スマホによる大容量データ通信が普及した今だからこそ、一気にさまざまなサービスが登場してきたのでしょう」 ◆結局、どのサービスを選べばいいのか?  現在日本で利用できる“4大”サービスは下記のとおり。曲数だけを見れば、アップルミュージックが他を圧倒しているが……。 「洋楽を聴くならアップルミュージック一択、LINEミュージックは最新のJポップには強いけど洋楽の懐メロなどは弱い、AWAはやや決め手に欠ける……今のところはそんな印象でしょうか。アップルミュージックはiTunesミュージックストアの資産があるので一日の長があるのは当然として、結局はどこのレーベルと契約するかという話なので、メジャーレーベルについては大きな差をつけようがない。インディーズレーベルにしても、例えばヨーロッパではインディーズを取りまとめる中間業者がいて、そこと契約すれば主だったレーベルとは大体契約できるため、ラインナップは意外とどこも大差ないと言われています。最初は物足りないなと思っても、いつのまにかラインナップが充実しているのがこの種のサービスの常でもあるので、無料お試し期間が終了する3か月後が本当の勝負の始まりと言えますね」  そもそも、いくら曲数が充実していても、マイナー曲をピンポイントで検索して聴こうとするのは音楽好きだけであって、ライトなリスナーはそこまで能動的な聴き方をしていない可能性が高い。 「だからこそ、そんなライト層に対していかに音楽の聴き方を“提案”していくかが、サービスの成否に大きく関わってくるはず。さまざまなテーマに合わせてプロやアーティストが選曲したプレイリストを提案するレコメンド機能は、各サービスがもっとも力を入れているところ。そのあたりが好みに合うかどうかでサービスを選ぶといいのではないでしょうか」  また、忘れてはならないのがSNSとの連携機能。 「CDが売れなくなってもライブの動員は落ちていないように、音楽を“共通体験”として楽しむのが今のスタイル。その点、LINEミュージックはLINEという強力なインフラと繋がっているのが大きな強みですね。『オレはこんな曲を聴いている』と全世界に向けてアピールするようなツイッターのノリとは違い、今まさにLINEでトークしている相手に対して『この曲いいよ』とシェアできる、新しい楽しさがあります」 ◆ナンバーワン配信サービス「Spotify」は来日する?  こうして新サービスが盛り上がりを見せる一方で、世界最大のシェアを誇るスウェーデンの「Spotify」は、いまだ日本上陸を果たしていない。 「もう数年も前から『そろそろ来る』と言われ続けており、アプリもすでに日本語に対応しているなど準備万端なのに、全然実現する気配がない。これは、Spotifyが基本的にフリーミアム――つまり、広告が入ることでタダで聴けるというシステムを採用しているからです」  定額制音楽配信によるアーティストへの支払いは、有料サービスですらCDと比べて格段に低く、無料となれば推して知るべし。海外でも、テイラー・スウィフトがSpotifyの支払いの安さに疑問を呈し、全楽曲を引き揚げるという“事件”が起きたほどで、この手の話に敏感な日本で拒否反応が起こらないはずがない。Spotifyのデータベースを基にしているソニーの新サービス「プレイステーション・ミュージック」(こちらは有料だが)も、日本でのサービス開始は様子見状態だとか……。  とはいえ、リスナーにとっては、“無料”の選択肢はやはり魅力的。気長に日本上陸を待ちたい。 <Apple Music> 月額料金/980円 曲数/3000万曲以上 ●洋楽のラインナップは他を圧倒。ラジオ機能も注目が集まっており、24時間生放送の「Beats1」は“世界中の人が同じ曲を聴いている”というコンセプトがユニーク。●歌詞表示機能がない。ビットレートが256kbpsと大きく、データ制限に引っかかりやすい。 <LINE MUSIC> 月額料金/1000円(時間無制限)  曲数/150万曲以上(年内に500万曲) ●LINEでの「友だち」がよく聴いている楽曲を教えてくれる「フレンズチョイス」、友だち同士で楽曲を共有できる「シェア機能」など、LINEと連携した機能が充実。●友だち同士のシェアを重視しているせいか、レコメンド機能はあっさりめ。 <AWA> 月額料金/1080円(プレミアムプラン) 曲数/年内に500万曲 ●一部機能が制限された「ライトプラン」は月額360円と手頃。人気DJや音楽プロデューサーら、著名人によるプレイリストなど、レコメンド機能が充実している。●他サービスと比べて独自色はやや薄い。今後の展開に期待。 <KKBOX> 月額料金/980円 曲数/1000万曲以上 ●台湾発のサービス。アジアンポップスに強いのが特徴で、C-POP(中華系ポップス)や香港ポップスも充実。独自のSNSによるシェア機能はLINEミュージックのそれに近い。●アジアンポップスに興味のない層にとって、さほど使いでのあるサービスとは言えない。 【小野島大氏】 音楽評論家。’08 年より『ミュージック・マガジン』誌上で「配信おじさん」を連載中。同連載は『音楽配信はどこへ向かう?』というタイトルで電子書籍化されている 取材・文/SPA!編集部 図版/コヤナギユウコ
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