更新日:2022年07月04日 11:41
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牡蠣の旬はむしろ春!「雪解け牡蠣」ブランド化に託す、陸前高田の漁師の思い

牡蠣の旬はむしろ「春」! 「雪解け牡蠣」ブランド化に託す、漁師の思い

身はぷりぷり、貝柱まで甘みしっかり。飯田と荻上も大満足。箸が止まらない

米崎の牡蠣が美味しい理由

チキ:まだ、試行錯誤中というか、「雪解け牡蠣」もまだ途中だと思うんですけど、ゴールイメージはどう描いてますか? 佐々木:「雪解け牡蠣」をヒットさせてメリットがわかってもらえたら、他の牡蠣漁師に合流してもらおうってのが最初のイメージだったんです。でも、「雪解け牡蠣」は思っていた以上にリスクが高かった。なので、「雪解け牡蠣」を入り口にして、消費者の皆さんに「米崎牡蠣もあるんですよ」と知ってもらう。それで、「米崎牡蠣」の名前が広がって、単価が上がってきたり、飲食店が直接取引することが増えてくればいいなというのが、今の目標です。もちろん、「雪解け牡蠣もやりたい」という漁師からの声も大歓迎なんですけどね。 チキ:リスクというのは、どういうことですか? 佐々木:牡蠣は5月中旬位から味がガクンと落ちるんです。だから、その前に売り切らなくてはいけない。どの位の牡蠣を残すのか、見込みを外せば損失は出るし、春までやっていると、次の仕込みや漁場の回転がどうしても遅れてしまう。また、「佐々木学」という名前で売っているので、万が一、味が落ちたものが出回ってしまったら、信用問題にもなりますから。 飯田:細かな話かもしれないけど、逆に「雪解け牡蠣」は、期間限定・品薄ということに価値を求めるのも戦略としてアリじゃないかな。 チキ:貴重さですね。30食限定のラーメン屋みたいな。 飯田:イチゴが典型だけど、超レア品種の超高級品を作って、それは一瞬で売り切れてしまう。けれど、消費者の「ほしい」気持ちでセカンドレーベルの購入にを引っ張る力になるわけです。実はセカンドレーベルのほうが収益の源で、トップオブトップは単なる宣伝広告費としての位置づけというやり方もある。「なかなか手に入らない雪解け牡蠣」はプレミア感あるし、買えた人はなんかすごいうれしい感じがするんじゃないかな。 佐々木:そうですね。浜の活性化と地域へ還元がいちばんなので、「雪解け牡蠣」をきっかけに、「米崎牡蠣」の名前が広がればと思っています。 チキ:利益を還元するっていうきっかけづくりが「雪解け牡蠣」なわけですね。 佐々木:米崎ってすごい先進的で、生産調整というか営業計画をかなり早くに導入していた過去があるんです。今は行っていませんが、例えば、ワカメの養殖でもイカダあたりの水揚げ額をポイント制にして、点数が悪い人は翌年イカダの数を減らされて、たくさんいいものを作れた人は来年、もっと作れるみたいなルールがあったんですよ。このような過去があり、今の高品質な牡蠣生産の礎となっています。 飯田:あまり獲れなかった人を救済するために来年は増やしてあげましょう、というのは聞くけど、逆は珍しいですね。 チキ:それが、品質向上にもつながったんですね。 佐々木:例えば牡蠣でも、うちの祖父が牡蠣組合の組合長をやっていた時に、養殖いかだの大きさを4m×10m四方と決め、下げるロープの長さや本数など、全部規格を決めたんです。しかも、ズルをした人は、全部ロープを切り落とすみたいなことまでやったんです。牡蠣に十分な栄養を与えて実入りをよくするためで、これによって米崎の牡蠣全体の品質はかなり上がりました。 飯田:今、「雪解け牡蠣」のブランディングがうまくいっているのも、そもそもの大前提として「いいもの」だからというのがあるんですよ。品質を無視したままブランディングをしても、一瞬はうまくいったりするけど、長続きしないから。
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「雪解け牡蠣」は入り口にすぎない?
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