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牡蠣の旬はむしろ春!「雪解け牡蠣」ブランド化に託す、陸前高田の漁師の思い

牡蠣の旬はむしろ「春」! 「雪解け牡蠣」ブランド化に託す、漁師の思い 牡蠣(真牡蠣)の旬は冬。そう思っている人も多いだろう。が、実は身が大きく育ち、旨みが増す春こそが牡蠣の“味”の旬。春の牡蠣のブランド化によって、東日本大震災からの復興と浜の未来のために奔走している人がいる。エコノミストの飯田泰之と評論家・荻上チキの2人は、陸前高田市米崎町から「雪解け牡蠣」を世に送り出した牡蠣漁師・佐々木学さんを訪ねた。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1091130

自信を打ち砕いたボランティアからの一言

 陸前高田市米崎町は広田湾の奥、気仙川の河口に位置する。海水と淡水が混じる汽水域のため植物性プランクトンが豊富で、牡蠣の生育には最高の環境。ぷっくりと肉厚で味も濃厚な米崎の牡蠣は、築地でも高い評価を受け、主に高級料亭などで使われていた。佐々木学さんは、この地で60年超、牡蠣を育ててきた牡蠣漁師一家の3代目。佐々木さんが「雪解け牡蠣」を立ち上げたのは、震災から2年後の2014年春だった。 飯田:震災後は一時期は生産活動できなかったんですよね。再開できたのは、いつ位だったんですか? 佐々木:再開に向けてすぐに動き始め、実は3年目位には100%に戻っていたんです。 チキ:それは牡蠣の成長の速さと関係あるんですか?
牡蠣の旬はむしろ「春」! 「雪解け牡蠣」ブランド化に託す、漁師の思い

佐々木学/1984年生まれ。岩手県陸前高田市米崎で、牡蠣養殖に汗を流す祖父と父の姿を見ながら、海で遊ぶ幼少期を過ごす。大阪の水産専門学校を卒業後、大阪堺の釣り船屋で1年半働き、22歳の時、米崎に戻り、佐々木家の船「丸吉丸」を継ぐ。2011年、東日本大震災。「雪解け牡蠣」のブランディングで「米崎牡蠣」の知名度アップを目指す

佐々木:復興支援のおかげですね。養殖イカダは木の丸太で作るのですが、かなりの重労働で、僕と父の2人だけだったら一日2個が精いっぱい。でも、ボランティアの方に来ていただいて、一日15個位できて、それが1週間、10日と続いて、一気に復興が進みました。 チキ:イカダはもともといくつ位あるものなんですか? 佐々木:うちは43台です。いかだ2つで1台って計算するので90台近く。米崎の漁港の牡蠣生産全部だと600台位になります。しかも、いかだができたら今度は船で引っ張って沖に係留しないといけません。2人でやっていたら、1年2年では再開できなかったと思います。 飯田:ボランティアに助けられて、生産自体は元に戻りつつあるわけですね。震災後、出荷先での変化はありますか? 佐々木:震災前はほぼ、築地をはじめ関東がほとんどだったんですが、今は、飲食店さんとの直接取引を20店舗位しています。あとは、大船渡魚市場の場外での直接取引もはじまって、魚屋さんに卸したりもしています。 飯田:震災以前はほぼ関東の魚市場だったのが、地場への流通も少しづつ始まった、と。 佐々木:以前は、観光客が来てくださっても、いいものを食べてもらえなかったんです。それも残念だなという思いもあったので、地元へも流せるようにしています。盛岡の居酒屋さんでよく言われるのは、陸前高田とか大船渡から来る人が学さんの牡蠣を食べて感動して帰ってくって(笑)。 飯田:「いいマグロが食いたければ、築地に行け」とはいろいろな産地でいわれることがありますね。大間の極上のものは築地に行くでしょうから。 佐々木:大間と違うのは、こちらは自信をもって作っていたし、築地でも評価されているのに、「米崎の牡蠣」は、地元でも全国でもほとんど名前が知られてなかった。支援に来てくださったボランティアさんに、「え? 陸前高田って牡蠣作ってるんですか?」って言われたんです。これはショックでした。 チキ:それが「雪解け牡蠣」のブランド化のきっかけになったんですか? 牡蠣の旬はむしろ「春」! 「雪解け牡蠣」ブランド化に託す、漁師の思い佐々木:震災前からなんとなくは頭にあったんです。「雪解け牡蠣」は、2月末から3月、雪解け水が山から湾に流れこんで植物プランクトンが爆発的に増え、牡蠣はぷっくり身入りがよくなり、味の密度が増す。 牡蠣は冬のイメージが強く、春になると市場でも値がつかなかったんですが、味は間違いなくいいので、そこを逆手にとれないかな、と。だから、「雪解け牡蠣」という名前は決まっていて、でも、具体的にどうしたらいいのかわからなかった。震災後、復興のワークショップで出会った人たちにアドバイスをしてもらいながら、模索しつつやってきたって感じです。
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生産者がその思いを語る意味
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