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“ステロイド疑惑”についに司法のメス――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第145回

 WWEの“ステロイド疑惑”は、ジョージ・ザホリアン医師を被告とした1991年6月の“ステロイド裁判”までさかのぼる。ザホリアン医師はステロイドの不正販売・流通に関わる12の罪状で有罪となり、懲役3年の実刑判決を受けた。  ペンシルベニア州アスレティック・コミッション指定ドクターとして同州で開催されるWWEのハウスショーにアテンドしていたザホリアン医師から定期的にステロイドを購入していたクライアントは、WWE所属レスラーだった。アメリカじゅうのマスメディアが注目した“ステロイド裁判”ではロディ・パイパーら人気レスラー数名が証言台に立った。  FDAは1988年、ステロイドを指定薬物に認定し、医師による医療目的以外での処方と販売を禁止。1991年、DEA(米麻薬取締局)が医療目的以外でのステロイドの不正使用を薬事法違反ではなく麻薬取締法違反とする法案を議会に提出。これが議会で可決され、医療目的ではないステロイドの処方・流通・販売がフェロニー=重罪に指定された。  FBIは約20カ月間におよぶ捜査活動をへて、ビンスとタイタン・スポーツ社をステロイドの販売・流通の容疑で在宅起訴した。米司法省はマスメディア向けに配布したプレス・リリース(1993年11月18日付)で「被疑者(ビンス・マクマホンとタイタン・スポーツ社)は指定薬物であるステロイドを医療以外の目的で被雇用者(レスラー)に販売・流通」と起訴理由を提示し、さらに「被疑者は共同謀議によるステロイドの販売・流通により非合法的に被雇用者の体つき、筋肉組織を改造し、それによって収益を増大し、多大な利益を得た」と“会社ぐるみ”の薬物流通を糾弾した。
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起訴から5日後
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