鳴り止まない電話――連続投資小説「おかねのかみさま」
居酒屋 リグレット 19:45
トゥルルルルー
健「はい!あの時ああしてれば今ごろもっとこうだった!居酒屋リグレット蒲田駅前店担当健太でございます!はい!え!このあと4名さま!はい!あ!あれ?なんだ、学長ですか?」
学「そうでーす」
健「3名さまですね!それではお席のほう準備しておきます!」
学「もう前にいる」
ウィーン
健「あ!いらっしゃいませ!!!お昼食べ過ぎるんじゃなかった!居酒屋リグレットへようこそ!」
学「あれだね健太くん、いちいちうるさい店だね」
マ「ほんとねー」
健「ママさん!あ!村田さんも!」
村「働いてるなぁ~健太~。時給いくらだ~?」
健「村田さん…飲んでますね…」
村「飲んでるよ?飲んでる。飲んでるかな?飲んでる。席どこだ」
健「こちらです…」
学「いやー、たまにはこういうトコもいいもんだね」
マ「たまにはねー」
学「ママんとこがバルサン焚いた日にはここに来ることにしよう」
村「ンゴー」
マ「じゃ、飲み物頼みましょうか。あたしビール。むらちゃんは?」
村「…鏡月」
マ「ボトルね。学長は?」
学「ワシ、このハニートーストってのを押し倒したい」
マ「無責任な老い方の頂点ね。すいませーーーんけんたくーん」
健「はひぃ!ごちゅうもんおうかがいします!!!」
マ「生ビールとー」
健「はい」
マ「鏡月のボトルとー」
健「はい」
マ「ハニートースト」
健「はい」
マ「あと枝豆」
健「はい、ご注文のほうを繰り返します。なまび…」
村「くりかえすんじゃねぇ」
健「え」
村「くりかえすんじゃねぇよ…健太…繰り返しちゃだめだ…お前は…ノウサギ経済大学の星になるんだよ…俺たちは自分を信じられなかったってだけで、誰かが通った道をなぞるしか能がなかったんだ…だけどそれはもう20年も30年も前に誰かが決意を持って切り拓いた道だったんだ…あとから似たようなことを繰り返す俺達の未来が保証されてるはずなんてなかったんだ…バカヤロウ…けんたぁ…くりかえすな…おまえはバカだけど…道を踏み外したってとこだけは…俺よりずっと上なんだ…くりかえすな…くりかえしちゃだめなんだよぉ…」
健「師匠…」
村「ンゴー」
マ「……」
学「ハニートースト、アイスのるかな」
健「あ!はい!100円でトッピング可能です!」
学「じゃあいらない」
健「か、かしこまりました…少々おまちください!!!」
次号へつづく
【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。
Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa
2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html
「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾
〈イラスト/松原ひろみ〉
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