更新日:2017年11月16日 20:10
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11年間で22人を殺害した消防隊員・勝田清孝の知られざる素顔【大量殺人事件の系譜】

 勝田の毒牙にかかり命を落としたのは8人。ただしこれは、立件され刑が確定した犯行で、勝田は実際には22人の殺害を自供している。8件以外の残りの14件の殺人は、証拠不十分で迷宮入りしてしまったのである。  次々と買い換える車、愛人と同棲する優雅な住まい、拳銃を使用した犯行。派手な生活と欲望を充足する手段に過ぎなかったという点で、また、高級車を武器に、高速道路を使って行動範囲を広げ、各地を「転戦」して犯行を重ねたことも含め、戦後日本社会の「飽食化」と「広域化」、そして「虚飾化」を象徴する新しい犯罪だった。  ところで、勝田は逮捕後なぜ、迷宮入りしつつあった過去の殺人まで自供したのだろうか。当初は頑なだった態度。しかし、現場検証で捜査員がさりげなく握り飯を分けてくれるなど、自分に対する小さな心遣いに接するうち、良心の呵責にさいなまれるようになっていたのだ。勝田は、獄中手記でこう書いている。 <告白しない自分自身に、もはやごまかしが通らなくなっていたのです>  2000(平成12)年11月、勝田の死刑が執行された。52歳だった。これが20世紀の最後に執行された死刑だった。 <取材・文/青柳雄介>
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