大儲けの「JR東海リニア」に融資する3兆円の一部でもあれば、ジリ貧の「JR北海道」を救済できる
10月11日、今年度の第二次補正予算(総額3兆2869億円)が参院本会議で可決、成立した。同補正予算は、今年8月に閣議決定した事業規模28兆円超の経済対策の一環。この経済対策には「中央リニア新幹線の大阪延伸を8年前倒しするため」との理由で、JR東海に対してゼロ金利に近い超優遇金利での3兆円融資が盛り込まれている。政府はこれまでも、JR東海に対しては土地を取得する際の税金をゼロにすることを決定するなど、リニア建設に関する優遇政策を進めてきた。
超党派の国会議員の「公共事業チェック議員の会」は8月31日、山梨県内のリニア建設予定地を視察。事務局長の初鹿明博衆院議員(民進党)は「このプロジェクトには本当に実現可能性があるのか、政府がお金を出すのが妥当なのかを国会できちんと追及しなければいけない」と強調した。JR東海の幹部を国会に呼ぶことも視野に入れているという。
リニア問題に詳しい全国紙記者のA氏は、「3兆円融資はまったく意味不明」「国会で徹底的に議論するべき」と語る。
「これまでJR東海は『自力でリニア整備をする』と啖呵を切り、政治家が口を挟むのを嫌っていたのに突然、融資が決まりました。JR東海内部では『安倍晋三首相と懇意の葛西敬之・代表取締役名誉会長との関係が背景にある』と囁かれているようです。安倍首相にとっては、莫大なキャッシュフローを誇る超優良企業のJR東海に融資するなら焦げつく心配もなく、景気対策の“見た目”の金額を膨らますことができるので好都合です」
しかし、ドル箱路線の東海道新幹線を抱えるJR東海とは対照的に、JR北海道の赤字は年間500億円。もはや自力での経営改善を断念する寸前にまで追い込まれている。
「JR北海道は『自力では再建できない』という”万歳宣言”を出そうとしています。北海道は人口減少に陥っていて、運賃収入が増える見込みはありません。JR北海道が経営危機に陥った一因は、道内で鉄道と並行する高速道路が整備されていき、しかも他地域に比べて無料区間が多いことがあります。高速道路を無料で走る車との競争に負けたのです。その結果、JR北海道は鉄道の維持管理費すら十分に捻出するのに苦労して、整備不足から事故が相次ぐことになり、それがさらなる鉄道離れを招く悪循環に陥ってしまったのです」(A記者)

時速約500km、東京と名古屋を40分、大阪を67分で結ぶ計画の中央リニア新幹線。東京~名古屋間の開通が2027年、名古屋~大阪間の開通が2045年の予定だったが、政府は大阪開通の8年前倒しを要請している
鉄道の維持管理費すら不足するJR北海道
ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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