一人の女のために「人狼オフ会」が崩壊…なぜクラッシュを防げなかったのか【サークルクラッシュ事件ファイル②】
2013年2月16日(土)
この日も人狼ゲームのオフ会が開かれていた。メンバーはある程度異なるが、前回に続いて今回も来ているという人もそこそこいた。小田嶋はやはり加奈子にしつこく話しかけており、加奈子は苦笑しながらやり過ごしていた。オフ会のメンバーのほとんどは、加奈子が迷惑そうにしていることに気づいていた。
加奈子はその日、LINEを送る。「相談したいことがあるんですけど、会えませんか」と。
しかし、その相手は、一人ではなかった。先ほどの足立に加え、オフ会主催者の村口、また、参加者の中で最年長の飯田に加奈子は同じような連絡をしていた。
加奈子はそれぞれの男に日付をズラしながら会い、小田嶋に迫られていることを相談する。小田嶋が送ってきたLINEを見せながら。
「足立さんなら分かってくれると思って」
「こんなこと村口さんにしか相談できないんですけど」
「飯田さんだけが頼りなんです」
「「「2人だけで会ってたこと、誰にも言わないでくださいね」」」
こうして加奈子は3人の男との間に「2人だけの秘密」を作った。小田嶋との話だけではない。母親との仲が悪かった、姉である自分ではなく弟ばかりが優先された、というような加奈子の家庭環境の話がそれだ。
加奈子はLINEを駆使しながら、元々の彼氏である仲元も含めて4人との関係を秘密のままに同時進行した。
加奈子の方法はワンパターンだったが、この男たちはそもそもそこまで仲良くない。いわゆる「サークル」と違って定期的に顔を合わせているわけでもなかった。だからこそ、他の男の動向に疑問を持つことができなかったのだ。ここからはそれぞれの男の顛末を語ろう。
【足立の場合】
足立は人狼サークルでは「人狼のうまい人」という立ち位置だった。人狼のプレイ中も一番よく喋り、主導権を握ることがほとんどだった。しかし、口が悪いことでも有名だった。
「お前は黒確(人狼であることが確定していること)なんだから黙ってろよ」
「は? ここで狩人CO(役職「狩人」であることをカミングアウトすること)したら人狼側が有利になることわかんねえの? バカじぇねえの」
足立にキツく言われた初心者は萎縮して次回以降来ないことも多く、足立は特に女性に対してあたりがキツかった。オフ会の主催者である村口は、足立にたびたび注意していた。
「スタンドさん、さすがにそれは……」
「いやいやいや、noob(初心者、転じて『ヘタなプレイヤー』の意)ばっかじゃゲーム成り立たねぇじゃん」
「俺Sだからさ、論破されて傷ついちゃってる子見るの好きなんだよね笑」
険悪な雰囲気になっても、足立はやめなかった。足立の存在もあり、この人狼オフ会では女性が少なかったのだ。
加奈子もまた、最初は足立に暴言まがいのことを言われていたが、加奈子は人狼オフ会を去ることはなかった。それどころか、足立に対して頻繁にLINEしていた。
「私、ネットでも人狼やってるんですけどセオリーとか分かんなくて。人狼の上手い足立さんに教えてほしいんで、通話してくれませんか?」
足立は加奈子に頼られ、調子に乗っていた。小田嶋に言い寄られていた件を相談していたこともあり、もはや加奈子が自分に対して好意を抱いているということを疑わなかった。
「加奈子が俺のこと好きだって全然気づかなったよ」
「加奈子っていじめられたがってるっていうか、ドMだよね」
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