運命の“サバイバー・シリーズ”――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第273回(1997年編)
この日の午後、ビンスとブレットはこんな会話を交わしたという。
「どうしたいんだ? キミにはキミの望むやり方があるんだろ」
ブレットはこう答えた。
「あしたの夜、“ロウ”のリング上でベルトを返上したい。ファンはオレが(WCWに)移籍することはもう知っている。オレはきょうの試合でベルトを防衛して、あしたの夜、カナダのファンにさよならをいいたい。ウソはつきたくない。ほんとうのことを話すのがいちばんいい」
ビンスはブレットに念を押した。
「それがキミの望みなんだね?」
「まっすぐにまえを向いて、誇りをもって、出ていきたいんだ」
「きっとそれがベストな方法だ」
ビンスはブレットの提案に同意し、ふたりは握手を交わし、最後の会話はそこで終わった。
“サバイバー・シリーズ”のメインイベントは、WWE世界ヘビー級王者ブレットにショーン・マイケルズが挑戦した同タイトルマッチ。ドレッシングルームに戻ってきたブレットは、弟オーエンとデイビーボーイ・スミスに「“反則裁定”でベルトは守る」とだけ伝えた。
“モントリオール事件”の登場人物はブレット、ビンス、ショーン、そしてレフェリーのアール・ヘブナーの4人。完全にヒール・モードのショーンは、カナダの国旗を手に入場してきて、そのメープルリーフの旗を使って大げさにお尻をふくパフォーマンスでモントリオールの観客の大ブーイングを誘った。いっぽう、この時点では“ロウ”の連続ドラマのストリー展開上はヒールの立場にあったブレットもカナダの国旗を手にリングに上がってきた。
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