“モントリオール事件”の真相=ブレットの主張――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第272回(1997年編)
1997年9月から10月にかけてビンス・マクマホンとブレット・ハートは合計5回、ふたりだけの“密室ミーティング”をおこなった。
まず、9月3日のミーティングでビンスはWWEとブレットが交わした20年専属契約(1996年10月)の契約内容の一部修正と年俸(150万ドル=週給約3万ドル)のダウンを求めた。ビンスは契約内容を変更する理由を「カンパニーの経営上の問題」と説明した。ブレットはビンスの唐突な申し出に対し、返答を保留にした。
2度めのミーティングは9月22日、“ロウ・イズ・ウォー”のTVテーピングが開催されたマディソン・スクウェア・ガーデンのバックステージでおこなわれた。ここでビンスは「契約書に“穴”がある場合、キミは20年契約を破棄することができる」と前置きしたうえで、ブレットに対して「WCWへの移籍もオプションのひとつだろう」と伝えたとされる。
契約書の“穴”とは、ブレットがWWEとすでに交わした契約書の文面のなかにひとつでも不備な点があった場合、ブレットとブレット側の弁護士はWWEに対していつでも契約解除を通告することができるという意味だった。ビンスはブレットの気持ちがこの時点ですでにWCW移籍に傾いているものと解釈していた。
ブレットは「オレは古顔の囚人みたいなものだ。こっちの刑務所は住み慣れているし、看守も囚人仲間も全員、よく知っている。オレは友だちもいない新しい刑務所なんかに行きたくない」とコメントし、「このリングで過ごしてきた長い時間を考えるとじつにイヤな気分」とビンスに対する不信感をあらわにした。
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