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“笑顔で戦う”セパタクロー女子代表・中塚直子「この競技は難しいからこそ、楽しい」

 競技を始めて2年目、大学2年時には早くもナショナルチームの強化指定選手に選ばれた中塚。順風満帆な競技人生のように見えるが、実は一度、セパタクローを辞めている。それは大学4年のときだった。セパタクローはオリンピック競技ではないため、スポンサードしてくれる企業が非常に少ないのが現実である。では、選手はどうやって生活するのか? 先輩たちを見ると、プレーを続けるためにバイトや派遣をしながら頑張っている。それは立派なことではあるが、自分が想像していた社会人の姿とはちょっと違う気がした。中塚は就職活動をして、リゾート系企業の営業職に就いた。 「すごく迷いました。両親は“日本代表にまでなったんだから続けなよ”って応援してくれましたし。だけど兄や姉がしっかりした固い仕事に就いていたこともあり、私もまっとうに働きたいと思ったんですよ。正直、合コンとか飲み会とかにも少し興味ありましたしね(笑)。もっとも実際に会社に入ったら、忙しくてそれどころじゃなかったですけど」  そんな生活を1年ほど続けたとき、現在も同じチームに所属する青木沙和から声がかかった。もう一度セパタクローをやってみないかというのだ。聞けばマイナースポーツを支援してくれる企業が現れ、働きながらプレーが続けられそうだという。白寿生科学研究所という健康器具やサプリを販売する会社に実際に入社してみると、会社が遠征の費用を持ってくれるし、大会のときも欠勤扱いにもならない。“社会人になったら辞めるスポーツ”だったセパタクローを取り巻く環境は、少しずつだが改善しているようだ。

身長155cm。バレーボールほどではないが、やはり背は高いほうが有利だという

「オリンピックがないので、一番大きい大会はアジア競技大会になるんですよ。選手たちにとっては、そこで少しでもいい成績を残すというのが最大のモチベーションになっています。タイとかミャンマーが強豪国で、やっぱり競技人口もすごく多い。日本は前回のアジア大会で男女ともに銅メダルを獲ることができました。今後の夢としては、できるだけ長く続けたいですね。幸い私はこれまで大きなケガをしていないんですけど、セパタクローって痛めるときは一瞬なんですよ。ダメージが徐々に蓄積されていく感じじゃなくて、一発で選手生命が終わってしまう。だから長く続けながら、このスポーツの面白さを伝えられたらうれしいです」  現在の中塚は、会社勤めをしつつ、平均すると週4ペースで練習している。日本代表での練習、クラブチームでの練習、個人で行う筋トレ……。身体の柔軟性が何よりも大事な競技なので、家にいるときはテレビを観るときも歯を磨くときも常にストレッチをしているそうだ。最大の息抜きは、たまに日体大時代の友人と飲みに行くこと。そこでは普通のOLらしく、恋バナで盛り上がることもある。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1297737 「趣味は強いていえば洗濯かな。オフの日も、まずは洗濯機を回します。洗剤は普通にナノックスを使うけど、柔軟剤にはこだわりがあるんですよ。ファーファ、レノアハピネスのピンクのやつ、ラボン……このあたりを自分なりにブレンドさせて使っています。どれか単体だと、私にとって最高に心地よい匂いにならないので。理想の男性ですか? ……う~ん、私の洗濯魔ぶりを温かく見守ってくれる人がいいです(笑)」 【なかつか・なおこ】 1991年8月8日、福島県生まれ。身長155cm、体重44kg。神奈川県立藤沢西高校卒業後、一般入試で日本体育大学へ。大学1年時にセパタクローをプレーし始め、翌年から日本代表の強化指定選手に。以降、トサーとして目覚ましい活躍を見せる。現在は白寿生科学研究所に勤務するかたわら、国立セパタクロークラブに所属。好きなアーティストはゆず。試合前に聴きながらモチベーションを上げることもあるという。 〈取材・文/小野田 衛 撮影/丸山剛史〉
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