“笑顔で戦う”セパタクロー女子代表・中塚直子「この競技は難しいからこそ、楽しい」
―[もぎたて!女子アスリート最前線]―
~もぎたて女子アスリート最前線 第25回~
中塚直子はセパタクローの日本代表選手である……と言われたところで、どんなスポーツかピンとこない人も多いかもしれない。セパタクローとはネットを挟んだ相手コートに、足や頭を使ってボールを返し合うゲーム。いわばサッカーとバレーボールのハイブリッド球技といったところか。日本ではまだメジャーとはいえないこの競技に中塚が出会ったのは18歳のときだった。
「私自身、大学に入るまでセパタクローなんて知らなかったですからね。もともとはバレーボールをやっていたんです。だけど日本体育大学に入ると、バレー部のキツさに参っちゃって。練習もつらかったけど、髪を染めちゃいけないとかそういう部分がつらかった(笑)。で、どうしようか考えていたら、学食で高校時代の先輩に誘われたんですね。“セパタクローっていうのがあるんだけどさ。やってみない?”って」
セパタクローを始める人は、サッカーやフットサルの経験者が圧倒的に多いらしい。リフティングのような動きを多用するだけに、さもありなんといったところだ。サッカー未経験の中塚は、普通にラリーが続くようなレベルになるまで1年ほどかかった。想像していた以上にボールが固くて、ヘディングの反復練習をしていると頭頂部から血が流れてくる。だが、バレーボールでの経験が活かされることもあった。バレー時代、155cmと身長があまり高くない中塚のポジションはレシーブを専門とするリベロ。そしてセパタクローに転向してからはトサー。アタックを打つためのトスを上げる役割である。
「セパタクローの一番の見所は、アタックする瞬間だと思います。この競技でしかありえない動きをしますから。だから、まずはアタッカーのダイナミックな動きに注目していただけたら間違いない。でも一見すると地味なサーバーやトサーの選手も、実はいろいろ考えながら動いているんですよ。急に低いトスを上げたり、相手のブロックを交わすようなボール回しをして。そういうところをチェックすると、より面白さが伝わるかもしれないですね」
インタビュー開始前、小学校の体育館を借りて練習する風景を見学させてもらった。人間業とは思えないアクロバティックな動きの連続に、思わず口がアングリ。時間が経つのも忘れてしまう。オーバーヘッドキックのような体勢でアタックを決めたり、時速100km近いボールを足でブロックしたりするのである。球技というよりむしろ、ブラジルの奴隷格闘技・カポエイラのイメージに近い。「見ているぶんには抜群に面白いですけど、実際にプレーするのは難しそうですね」と話しかけると、「でも難しいからこそ、楽しいんですよ」と笑った。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1297738
「何が面白いって、相手との心理戦なんです。相手アタッカーの打つコースを読んだり、攻めていても急に拾われるようになったり……。ゲーム中は後ろにいる人が一番状況を把握できるわけですね。それで“もう少し右に移動したらブロック決まるはずだから”とか声をかけながら、チームの3人がひとつになっていく。相手が“決まった!”って感じで攻撃を仕掛けてきても、こっちはそれを読んでいて“しめしめ”って反撃する。そういうときは、ものすごい快感ですよ。だから、すごくやるべきことが多いスポーツ。課題が際限なく出てくる。ゴールはないです」
1
2
この連載の前回記事
【関連キーワードから記事を探す】
「アスリートは聖人君子である必要はない!」柔道男子100kg級代表ウルフ・アロンが“本音”を語る理由
スポーツから学んだチームプレイ、ロジカルな思考力。アスリート人材が社会に出てからも活躍するワケ
「バドミントン選手⇒人材会社経営」元アスリートが引退して気づいた“セカンドキャリアの難しさ”
バイリンガルは絶対にやらない「“英語が苦手な人”特有の頭の使い方」
暑い日には何を飲むのがいい? スポーツ医学から見る「最適な夏の飲料」とは?
22歳銀座最年少ママにトラブル続出!インバウンド客が支払い拒否に店内で大暴れも…
夜職を辞めた女性たち3人が歩む“その後の人生”。「パパ活女子に逆戻り」してしまうケースも
野島樺乃、3度目のデビュー「誰にも繕わない素直な自分を届けたい」
「300円が7万円に」パチンコの“ビギナーズラック”で人生が狂った50歳男性。18歳で“爆勝ち”を経験してしまった男の末路
大ヒットした『RRR』主演俳優が語る、インド映画躍進のワケ「日本のファンの愛情もすごいよね」
久保建英の存在が日本のコーナーキックを変える
58歳になった“キングカズ”こと三浦知良。「40年目のシーズン」突入で、いったい何を見せてくれるのか
J2優勝“翌シーズン”にJ1優勝争いのFC町田ゼルビア。黒田監督が「たった2年でトップチームに押し上げた」2つのこと
サッカーW杯日朝平壌決戦の行方。カギは定期便と人的往来再開か
“北朝鮮へ旅行”できる日は来る!? 政府間の秘密接触、サッカー日朝戦で、断絶に変化か
“笑顔で戦う”セパタクロー女子代表・中塚直子「この競技は難しいからこそ、楽しい」
【土日に稼ぐオイシイ副業】サッカー、フットサル大会の運営サポートで月10万円
【Fリーグ青年監督から見たW杯】フットサル出身者に見られる共通点とは?
この記者は、他にもこんな記事を書いています