更新日:2022年08月23日 15:46
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震災から6年…東京に住む福島出身女性に刻まれ続ける“被災タトゥー”とは?「あと何年『地震大丈夫だった?』と聞かれ続けるんだろう」

「#震災」をInstagramに投稿するいわき市出身者

小野寺恵美さん(仮名・年齢非公表・磐城桜が丘高校卒) 被災 ここまで紹介したのは「震災大丈夫だった?」の質問がウザいと答える2人だったが、それとはまた違った事例も紹介したい。  小野寺さんの出身地は太平洋に面するいわき市。福島第一原発から南へ45km。原発のある浪江町、大熊町など双葉郡の住民が多く避難している地域だ。震災以降は、地価の上昇率でも話題になり、“震災バブル”を享受している街のひとつとしても知られる。 「中学校が一学年1クラスしかないいわき市の山奥の中学校出身だけど、海沿いの更地になった場所(豊間海岸)まで行って、写真撮ってインスタにあげたことあります」  バッシュタグは「#震災」「#311」「#FUKUSHIMA」。  大量の「いいね」がついたという。インスタを見せてもらうと、ポエムのような文が並んでいた。 <久々の帰省。改めて誇りに想うふるさといわき。ここに来ると落ち着くな。ママの皺がちょっと増えてた。年取ったなあ> 「いわきは震災のあと2年目くらいから景気がよくなったと思います。マンションもどこも満室だったらしいし、この間帰省したら道路もすっごい整備されてたし。最近、地元に残ってる友達が震災以降いわきに住んだいわき出身じゃない人と結婚しましたね」  東京にいて「地震大丈夫だった?」と聞かれることは「慣れた」という。 「別に福島出身だからって差別されてるかんじはしないですね。誤解してる人は多いけど。『いわきって太平洋だよね?津波ヤバかったとこじゃん!』って聞かれて、『じゃあ原発もヤバいんじゃないの?』って言われたら『それは大丈夫』って言ってます。あと、最近もよくわいわきで地震があるので、そのたびによく友達からLINEが来ますね」 福島■ ■ ■  これが東京に住む福島出身女性のリアルだ。むろん、彼女たちの声がそのすべてではない。被災していまも辛い思いを抱えている人はもちろんいる。それもまた同等にリアルだ。  この時期、メディアがこぞって震災を深刻なトーンで報じるのはある種“安牌”と言えるかもしれない。「二度と被害が起きないために」「今も苦しみ続ける人たち」「遺族を亡くした悲しみ」。どれも人々の感情を揺さぶり、つらい気持ちになる。  一方で、希望を語るとバッシングが起きる。  「意外と深刻でない」「意外と明るい」「立ち直っている人もいる」「半径20km以内には東京と地続きの日常がある」とネットニュースが報じれば、すぐさま「深刻な人はどうするんですか!」「帰れず避難している人がいるのに!」とコメントがつく。その“炎上”を防ぐ手っ取り早い方法は、とりあえず深刻なトーンで震災を語り続けることだ。  だが、本記事で報じたように、わかりやすい被害者だけがいるわけではない。それは震災から時を経るほど複雑化している。今後は、東京に住む福島出身女性が語る「被災者タトゥー」に注目することで、見方もまた変わってくるのかもしれない。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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